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COLUMN

いい会社づくり通信

四つの視点で変化を構想する

2018.06.18岡村 衡一郎

 お客さまは誰か。
提供する価値は何か。
それをどんな商品・サービスで具現化するのか。
結果、自分たちはどうなるのか。
変化を構想するには、お客さまとの関係が深く、広くなり、結果、自分たちのやりがいが高まる。
そのために商品・サービスの使用価値をどう革新するか。
図 1 に示したようにお客さまとの関係の今までと、これからを中心に構想した方がいい。

 何かうまくいかないことがあると、解決策を精神論的に「がんばりが足りない」とか、テータをみて、客単価が減っているからとか、単純化したところに原因を求めがちになるケースが多い。
活力が下がっているのは結果である。
お客さまからよいフィードバックが得られていないのが原因である。
そして、よき感触が得らえない原因は商品・サービスにある。

 かつて、自動車部品商社 A 社の社員に疲弊感があった。
お客さまから車の修理に使う部品をいち早く収めるという仕事の流れがそうさせていた。
修理に入った車をみてからの注文にあわせ、部品倉庫を駆け回り、部品を揃えて届ける。
価値はスピード。
しかし修理工場にとって急いで当たり前、どんなに早くとも感謝されることが少ない、悪循環になっていた。

 このままでは、社員の努力も報われない。
結果として疲弊感がなくなり、お客さまの喜びがやりがいに変わる。
今のスピード対応を強めていくための細部のツメではなく、ビジネスモデルの転換が A 社にとっての本当の課題であった。
真の課題解決に向け、A 社は「新しい価値」に焦点をあて、「早く部品がくる」をいったん封印して、価値を考え直すことにした。

 数カ月間、忙しいなか集まり、あぶり出せたキーワードは「ストレスフリー」。
修理工場に入る自動車の部品がすでに手元にあれば、すぐに直せて注文の手間もいらない。
どの車が入ってくるかは分からないが、お客さまの注文履歴から、事前の 80%は必要なものが分かるはず。
20%のオンデマンドの対応は今のままに、8 割の手間を省ける可能性があるはずだ。

 お客さまがストレスなく修理に取りかかれる。
見直した価値を具現化するために、彼らが新たにつくった商品は「おれの棚」である。
注文履歴を調べ、それぞれのお客さまが必要であろう部品を最小のスペースに、あらかじめ棚にセットして客先に置いておくものだ。
定期的に入庫状況を調べ、新車の販売動向を見ながら、部品の品ぞろえを最適化したサービスを開発した。

 A 社とお客さまの関係は、かつてのような業者的なものではなくパートナーだ。
相手以上に、自分の修理工場にとって必要な部品を考えてくれるからだ。
かつての疲弊感は今やない。

図1_変化の構想

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 040」2017.4.21】