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COLUMN

いい会社づくり通信

客層に合わせた売り方を再構築する

2022.01.19岡村 衡一郎

 卸売から小売業へ。
ホテル業を取り巻く環境は、旅行エージェント経由の卸売業的な売り方から、小さくたくさんの人に売っていく小売業のような販売形態へのシフトが必要だ。
小売業の生命線は品ぞろえにある。
品ぞろえのよしあしは、お客さまの欲求の受け方のよしあしにある。
単なる数の多さや安さではない。
同じ売り場面積でも、大きく異なってくるのが品ぞろえである。

 以前、牛乳の品ぞろえを、売場面積の大きなスーパーと小さなスーパーを比べたことがある。
牛乳の売場面積は、大きな店は小さな店の5倍ほどだ。
普通に考えれば、5 倍も置けるのだから、大きな店が有利に働くように思えるのだろう。
だが、お客さまの欲求の受け方という質の品ぞろえに関して、小さなスーパーの方が一枚も二枚も上手であった。
お客さまの牛乳に対する欲求を理解している。
具体的には、大型店は、100 円代から 200円前半から後半の似つかわしい商品が横並びでそろえられているだけであった。
このような品ぞろえでは、お客さまの選択基準は、どのメーカーの商品にしようかと考えるくらいで、楽しみはない。
おそらくメーカー主導でそろえているか、お客さまはこれくらいの価格のものしか買わないというおもいこみからそろえているのだろう。

 対して、小型店では、100 円代から 200 円代、300 円代、500 円代と、価格に幅がある。
間に合わせ的に購入する人、価格を重視する人にとっての牛乳。
おいしいカフェオーレを飲みたい人にとってのコクがあるものを探している人。
よりナチュラルな本物品を求めている人にとっての牛乳など、お客さまと生活が牛乳に求めるものを分類して手を打っている結果であろう。

 自分たちのホテルの品ぞろえは、大型店の選べるようで選びにくい品ぞろえになっているのか。
それとも、小型店が行なっていた生活と牛乳の連関を意識した品ぞろえになっているのか。
異業種の事例から自社の品ぞろえのレベルを考えてほしい。

 MDのレベルは次のように 5 段階に分けられる。
レベル 1:イメージ型 MD レベル 2:価格訴求型 MD レベル 3:価格帯別MD レベル 4:グレード別 MD レベル 5:客層別グレードMD。
大型店は 3 段階目の価格帯別MDを初級レベルで展開していることになるし、小型店は 5 段階目の客層別グレード別 MDを実践していることになる。

 最初はだれだってイメージから入る。
そこで売れないことが多いから価格訴求で安さ伝えてなんとかしようとしていく。
安く売っていては儲からないから価格帯事の売りわけを考えていくようになる。
価格帯事の違いを売り手が実感していくことで、グレードの違いがはっきりと認識されていく。
そして、お客さまの求める欲求とグレードの連関が分かってくる。

 ホテルの部屋も品ぞろえである。
誰のどんな欲求を満たしていくためのものか。
そのグレードは、ささやかなリニューアルで、より、その客層が求めるものに近づけていけないか。
まとめて提示していくのではなく、細かく、細かく、品ぞろえを考えて、さまざまな客層からの支持を得ていくことが、今、必要だ。
お客さまは、自分の求めるもの=価値を、一定の予算内で一番満たしてくれるところを選んでいくのだから。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 243」2021.11.5】