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COLUMN

いい会社づくり通信

新たな存在意義へのトライ

2022.01.17岡村 衡一郎

「ずっと見直し。ずっと良い値。」
無印良品の店舗のファサードに掲げられている横断幕だ。
消費者へのメッセージが次のように書かれている。
素材の選択、工程の点検、包装の簡素化は 1980 年から変わらない無印良品の原則です。
くりかえし点検することで、日々の暮らしを支える日用品を最適な価格で、この先もずっと提供しつづけます。

 変わることが選ばれる条件であり生き残りの秘訣だと、多くの人は頭ではわかっている。
お客さまと商品・サービスの関係は変わる。
価値と価格の磁場も時代によって変化する。
しかし無印良品のように、そのための力点を明らかにして実践するのが当たり前になっていない企業の方がめずらしい。
挑戦をスローガンに掲げる企業ほど、その実践はあやしいものなのかもしれない。

 住むように泊まるホテル。
新たな存在意義への具体的なトライをしている施設があった。
音響設備充実の映像ルーム2時間千円。
ネットフリックス、Amazon の映画などを自由にゆったりと鑑賞できる部屋だ。
全室満室にならない今、遠方からではなく近隣の人に楽しんでもらう場所として提案の一つだ。
私が滞在中に、数件のお客さまが利用している姿があった。

 おそらく無印良品の商品改良会議では、素材の選択、工程の点検、包装の簡素化が議論の下敷きになっていることだろう。
もっと適した素材はないか。
工程を省く、もしくは付け足す必要はないか。
余分な包装が売価に転嫁していることになっていないか。
お客さまに、さらに価値/価格がよい商品、別けあって安い良品を実現していくための押さえどころとして完璧に近い。

 お客さまになりきって何が必要なのかを訴えかける行為がマーケティングという。
住むように泊まるホテルも、ずっと見直し。
ずっと良い値の無印良品も、お客さまの生活の一部に溶け込んでいこうとする努力という意味では同じだ。
かつて一部のアパレルメーカーやホテルがやっていた商品の実態とは異なるイメージを伝えて、お客さまを従わせるようなやり方と真逆にある。

 生活や仕事、そして旅行。
お客さまの溶け込んでいくホテルになる。
先日、福祉との融合、教育との融合、文化との融合を熱く語るホテルマネジャーの方々にお会いした。
なるほど、設備と技能の大半は、もうすでに持っているから、その気になればトライできるテーマだ。

 これから先の 50 年、必要とされる施設になるために何を見直ししていく必要があるだろうか。
自分たちの存在意義を狭くとらえることなく、可能意識をもって再定義していくことにも今の時間を使ってほしい。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 242」2021.10.22】