事業の新しい可能性を拓くための四つの質問
2021.11.16岡村 衡一郎
数十泊分、まとめて〇万円。
テレワークや自分の居場所、落ち着ける場としての販売形態が好評のようだ。
新たなお客さまの使用価値の開拓は、いま旬なテーマだ。
完売、数十泊分、まとめて〇万円というニュースを聞けば、なぜ、自社で先に取り組まなかったのだろう、と思えるくらいに近くにあるのが、イノベーションなのかもしれない。
経営学者のドラッカーは「どうして自分たちに思いつけなかったのだろう」と言われる成功事例が、最高の賞賛だと言葉を残している。
コーヒー一杯 360 円の時代に、180 円で販売したドトールが業界ナンバーワンになったのは、予期せぬ成功だと言える。
飲食店から喫茶店への業態変更の依頼を受けた際、物件が狭かったから立ち飲みスタイルをはじめた。
というか、せざるを得なかったといった方がいいかもしれない。
まとめて〇万円は、ホテル業界以外では当たり前に行なわれているバンドル販売の形態。
立ち飲みスタイルは、ドイツ、イタリアでは常識だった。
変化とは〇〇の応用とも、コロンブスの卵ともいえる。
しかし問題になるのは、自分たちの問題意識や課題意識に立脚しているかという点。
しょせん借り物は借り物で終わっていってしまうからである。
ほか業界の事例 や、 現場で発生しているだろう変化のシグナルをつかまえて、自社の変化構想を考える上で、私が、お客さまと活用しているのが図表 1 に示した四つの質問である。
図表1_四つの質問
質問 1:お客さまは誰か、誰になるのか/質問 2:提供する価値は何か、何にしていくべきか/質問 3:それをどんな商品・サービスで具現化するのか/質問 4:結果、自分たちはどうなるのか
何度か本連載で紹介しているテニススクールの革新は、お客さま視点での要望の発見にあった。
念のためもう一度触れておくと、お客さまの手帳にレッスンの日にはハートのマークが記載されていることをコーチが知ったことが、革新のきっかけをつくった。
♥は、本当に楽しみにしてくれている証。
お客さまのそのような思いに十分に応えているだろうか、が出発点だった。
そして、レッスンがもっとも楽しく感じられるだろう「コーチとのラリー」の時間を、業界平均の倍とる形へと、すべてのカリキュラムを見直していったのだ。
そこから、お客さま同士が仲良くなれる後押しやケガの予防、コーチ一人一人の持ち味が商品になったスポットレッスンの開催などのサービスメニューの革新につながっていった。
これは、スクールに通う理由は上達だけでなく、「楽しみ要素も」という着想の変化による。
言われてみれば、当たり前かもしれないが、実際に商品・サービスに具現化できているテニススクールはそれほど多くない。
ホテルや旅館の利用価値は、何もあり得るだろうか。
きっと、今まで、無条件に断っていたことの中にヒントがあるだろうし、異業種の取り組みも参考になるだろう。
ぜひ、四つの質問も活用いただき、自社の変革の入り口を探してほしい。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 222」2021.5.28】