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COLUMN

いい会社づくり通信

ヒット商品の背景にある愛情 ⑴

2021.11.19岡村 衡一郎

 静岡市にある自転車店ウミノには、中高校生の 3 ~ 4 人に1 人以上に選ばれている商品がある。
何より自転車はパンクがやっかいだ。
ところが大きなカバンを運搬できても、人と同じじゃつまらない。
逆に尖がったデザインのないものを好む学生もいるだろう。
支持される背景に開発責任者であり社長の岩本さんの学生と自転車に対する愛情がある。
通学に対する不安を解消して、中高生になりきって開発し常に改良をし続けている。

 自転車業界の一般的な傾向は、ナショナルブランドのブリジストンなどや全国展開している自転車店のオリジナル自転車など種類は多様。
加えてホームセンターの自転車売場の増強もあって、地場の自転車店が商品で勝るケースはあまりない、いやほとんどない。
ところが自社商品で勝負できている静岡市のウミノはレアケース中のレアケース。
企業規模で言うなら、1/100、いや1/10000 の企業の快挙である。

 ほとんどの人が誤解していることがある。
会社が商品をつくっているという誤解だ。
会社が商品をつくっているのなら大きな資本を持っている会社が優位だろう。
しかし本質的には、商品は人がつくるものであり会社がつくるものではない。
どの業界にもライバルの他社が存在すると思うが、その会社の商品開発責任者と、自社の責任者との視座の違いが商品に、商品の使用価値と価格のバランスに現れてくる。

 ひと昔前の話になるが、居食屋ワタミが急速の伸びてきていたころ、ワタミが来たなら売上が下がっても仕方がないという雰囲気が居酒屋業界にはあった。
一方、同世代の客層をメインとしていたある居酒屋は、ワタミが出店してきても業績は下がらなかった。
それは、ライバルとの支持率競争を会社対会社でとらえたのではなく、店長対店長でとらえたゆえに、右往左往することなく、支持率アップの対策が打てていたからだ。

 ここにウミノが市場に向けて打ち出しているチラシがある。
細部の説明は次号以降でさせていただくとして、他店のチラシ、販促物と見比べてみるとその違いは歴然で、学生や商品に対する愛情を感じ取れる。
例えば、女子学生のカットのところに「6 年以上乗れます」と打ち出していたり、この上部には「修理こそ当店へ」の文字もあるなど、他店購入の商品も笑顔で修理する心意気がにじみ出ている。

 働いている人の意識が結晶化したものが商品であり、チラシなどの販促物なのだから、そのアプローチは当然とも言える。
ところが世の中には無味無臭といったら言い過ぎだが、販促物の中身を変えずに、店名だけを入れ替えて使えるようなものが多いのも事実だ。
次号でもウミノの通学用自転車が支持を生み出せている愛情について触れていく。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 223」2021.6.4】