チェンジするためのコンセプトの見つけ方⑷
2021.11.01岡村 衡一郎
4回前から引き続き、変革するためのコンセプトの見つけ方を書いている。
図表にあるように、見付ける源泉となるのは「きづき」「おどろき」「ひらめき」である。
これはトヨタ自動車を世界一にけん引してきた金田秀治氏から教わったものだ。
「きづき」は、問題点からなぜを5回で真因を探っている中で得られるものであり「おどろき」は日本と世界のトップレベルに触れることで自社への応用展開を見付けることであった。
今回で触れていきたいのは「ひらめき」である。
これは、究極の理想のイメージを持ちながら、何かに触れたときにアイデアが沸き上がっていく瞬間だ。
有名な話だが、金田さんの上司にあたる故・大野耐一さんがアメリカの食品スーパーを視察したときに、商品を取り出すと後ろから新しい商品が自動的にセットされるのを見て、売れた分だけつくるトヨタ生産方式への「ひらめき」を得た。
製造業の究極の理想は、売れた分だけを在庫を持たずにつくれること。
そして製造過程に手待ちがないことだ。
おそらく大野さんや金田さんは、常日ごろ、朝から晩まで、理想のイメージが頭から離れることはなかっただろう。
食品スーパーと自動車の生産ラインは全くの別物である。
時間を巻き戻したとして、今は当たり前に見かけるコンビニのドリンクの棚(取りだしたら次の商品が送り出される)を見て、関連付けて考えられただろうかと想像してほしい。
世界一丈夫な骨格を持つトラックをつくる過程で昆虫にヒントを得た。
ふた昔前の電車の自動改札は切符がよくつまっていた。
切符による詰まりをなくすヒントは、小川を流れる葉っぱからだった。
これらも同様、理想の状態を持ち歩くことで得られた「ひらめき」によるものだ。
イノベーション体質のトヨタ自動車では、自分の思い描くイメージを伝え、共有して、アイデアを出し合っていくために、図解を多用していたという。
今、目の前にない理想を共有するには、図でのイメージが必要であったから活用していたのだろう。
自分たちが営む事業体の究極の理想は何か。
考え抜いていても、最後のワンピースが見つからない。
このようなシーンは、多くのリーダーに共通することだろう。
「ひらめき」を得るために、究極の理想イメージを言葉にして、絵にして持ち歩いてみるのはどうだろう。
何かに触れたときに、ヒントなるシグナルが発見できる可能性は上がっていく。
業界を超えた先に「ひらめく」ための材料は転がっている。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 215」2021.3.26】