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COLUMN

いい会社づくり通信

爆弾ハンバーグとダブルトマト

2021.10.08岡村 衡一郎

 栃木県を中心に展開しているファミリーレストラン、フライングガーデンのスタッフからは仕事の誇りが伝わってくる。
「おすすめは、爆弾ハンバーグです」。
いらっしゃいませの言葉と同時に発せられる言葉から商品への誇りが伝わってくる。
お客さまの目の前での最終仕上げの動作(真ん中で俵型のハンバーグを切って鉄板の熱で仕上げる)は、美的レベルの動作で無駄がない。

 キングサイズ 250g、税別 999 円、限りなく味はステーキに近づけて、ハンバーグならではの味わいを出す。
さらにおいしく。
適した部位の選定、素材の最適配合比率、仕上げ工程などの研究を繰り返し行なっているようだ。
もちろん、食に対する安全性の追求を徹底している。
最終の味を左右する切り分けは、社内認定制度を通ったマイスターだけが行なえる。

 昔、ケーキを強化しようか、サラダバーか、モーニングか、肉料理を加えようか、メニュー改定に迷った。
スパゲティ中心のレストラン A 店の経営者と、A 店の出口で顧客インタビューをやったことがある。
「なぜ、うちのお店に来ていただけているのですか」という質問を中心に「友人をご紹介いただけるとしたら何と言いますか」を 20 ~ 30 名に声かけていった。

 回答のほとんどは「スパゲティを食べに来ている」であった。
友人には「鉄板にのったダブルトマトを食べてみてと言う」が多かった。
そのお店は、自社製麺のもちもちとした食感の生パスタを開業からずっと続けている。
喫茶店での人気メニューを柱に専門店を開業したのだから、当然と言えば当然の結果であることは、第三者には分かるだろう。

 しかし、A 店の経営者には「スパゲティを食べに来ている」との回答は、日常にあるから当たり前すぎて見えなくなっていた時期であった。
加えて、売れているものは、売れているのだからこれ以上は売れないとも感じていた。
だから、メインであるスパゲティよりも、サブメニューのデザートやサラダ、客数が少ない時間の強化を検討してしまっていたのだ。

 お客さまの支持を素直に感じた経営者は、トマトソースのさらなる改良と、麺の配合比率や寝かす時間などを、もう一度見直していった。
自信を持って「うちのお勧めはダブルトマトです」と、来店客はもちろん、周辺への PRを手配りビラやチラシで行なっていった。
そのお店の周辺に、まだ、ダブルトマトの存在を知らない人がいるし、来店客もダブルトマトの評価を知らない人もいる。

 フライングガーデンには、ハンバーグを食べない人の対策としてだと思われる野菜とチキンの煮込みを準備してある。
A 店ではチキンの鉄板焼きがメニューにある。
ドリンク、サラダにケーキもパンもそれ相応に磨きをかけた。
しかし、これらの対策はメインが立っての話である。

 外部環境の変化で、集客に苦戦するレストランは多くあるだろう。
打開策として重要なのは、苦手への対処ではない。
集客する商品を決めることである。
何を目的に来てほしいのかを意思表示することが重要だ。
確固たる意思表示には、集客商品の研究の INGと店内スタッフが、お客さまよりも集約商品が好きであるという、二つの条件が欠かせない。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 203」2020.12.11】