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COLUMN

いい会社づくり通信

自分たちの技能を集客する商品に 凝縮して打って出る

2021.10.11岡村 衡一郎

 あるホテルで開催されていた「オーダーバイキング」に、お客さまが集まっていた。
地域の老舗ホテルのレストランでのイベントに、地元の主婦グループ、年配男性の懇親会、会社帰りの懇親会、宿泊客、親子連れと客層を問わずにぎわっていた。
カキ、ステーキ、刺し身、煮つけ、プリンなど約 80 種類の洋食、和食。
中華、デザートは、どれを取っても質が高い。

 レストラン事業の部長と話していたときに「ホテルが本気で地域を攻めてきたら脅威だ」と彼は言っていた。
シェフがいるレストランに、料理に質の高さがあるからだ。
しかし、待ちか攻めかで区分けをしたら、待ちの商売をしているのが、ホテル内にあるレストラン。
「そのままでいてくれればうちは助かる」というのがレストラン事業部長の本音であった。

 老舗ホテルのバイキングの第一弾のメニューは 3000 円を切る。
今までに数十回そちらのホテルに宿泊した。
今までは来たい人が来ればいいと言わんばかりの展開であった。
今回は、はじめてのお客さまへの歩み寄り方だ。
少しよいものを食べたいと思うときの、下限価格に食い込んだ展開だからそう感じる。
ホテルに入る前から店頭での告知もしっかりと行なっている。

 今、必要なのは、客数アップ。
集客する商品を決めて臨むのが重要な取り組みとなる。
ホテルの料理が 3000 円を切る価格で食べられるという、価値と価格のバランスは、お客さまにとっての集客目玉になりえる商品だ。
第一弾ではずみをつけて、第二弾に突入。
老舗ホテルでは、年末に向けた第二弾は別メニューで、もう一段上の内容の展開が決まっているようだ。

 客数をアップさせていきたいとき、繰り返しになるが、重要なのは集客商品を決めることである。
こんなことを書いていくと、安売りをすればいいのかという誤解が生じていくのだが、集客する商品は単なる安売りではない。
価値/価格(価格分の価値)で、お客さまの目を引く目玉になるものを決めるということである。
客数アップを漠然と考えてはいけない。

 東京都内の某有名レストランでは、コロナの影響で団体客の予約が激減する中で、個人客向けの 3000 円台のメニューを投入した。
二人で利用したら一人 3 万円からのレストランである。
3000 円台テラスを利用した軽食とアルコールがセットのメニューは好評だ。
理由は、日常にあるハレの日、出世、記念日を演出していきたい人にとって下限価格に近い商品であるからだ。

 老舗ホテルの「オーダーバイキング」も東京都内の某有名レストランの 3000 円台の商品も、ただの安売りではない。
安売りの極端な例は、3 万円を 1 万円で売ることである。
自社は何で集客するのか。
ブランド棄損だ、なんだかんだと、手をこまねいている前に、考えてほしい。
自分たちの技能をお客さまが、利用しやすいように凝縮させ、お客さまに近づいていく行為を形にした集客商品を。

「ホテルが本気で地域を攻めてきたら脅威だ」とある事業部長の発言の背景には、周りから見たときの、技能の良さ、暖簾、知名度、ハードの良さ、宿泊客が既にいること、顧客リストがあるなど、皆さんからみたら、当たり前にあるものが、活用できるという示唆である。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 203」2020.12.18】