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COLUMN

いい会社づくり通信

なりたい姿に近づけるシナリオを持つ

2020.10.13岡村 衡一郎

 事業を静的にとらえてはならない。
さらに強く思うようになってきた。
事業が右肩上がりのときに好まれていていただろう事業目標は静的なものが多くある。
例えば、売上200億円が目標とか、一人当たりの粗利を3000万円にする、などである。
言うまでもなく、売上や粗利がなければ事業は成り立たない。
しかし、これらの目標だけでは事業がはねないと言うか、面白味に欠けると言うか、やっている人たちが乾燥してくるのである。

 本来これらの目標は結果のはずだ。
一つ手前には、お客さまへの価値提供がある。
右肩上がりの時代は、価値提供の型があって、同じようなことを早く行なえれば数値はついてきたし、数値が伸びるから達成感を得られたことだろう。
インバウンド需要もあり観光業は、今は、右肩上がりかもしれないが、少し前までは、集客に苦慮されていた施設も多くあったのではないだろうか。

 2020年以降の景気を考えたとき、今から取り組むべきなのは、自社の提供価値の飛躍であろう。
ここにホテルがあります。
こんなホテルがあります。
私たちには、こんなことが提供できます。
これらの中で、三番目の「こんなことが提供できます」を胸張って言い切れるだけの準備が必要なのが、19年、これからの取り組みではないだろうか。

 本コラムで数回にわたって紹介させていただいているパークホテル東京は、日本の美意識が体感できる時空間になることを、取り組みの中心に据え飛躍を果たした。
ホテル業の枠の中に自分たちを位置させるのではなく、体感できる時空間の中に宿泊施設がついていると考え、自分たちの提供価値を磨いているのだ。

 最近では、欧米から「アーティストルーム」に泊まるのを、日本旅行の目玉に考えてダイレクトに予約をしてくれる人も増えてきた。
そして宿泊以外のアートイベントでは、中規模ホテルでは、おそらくトップクラスの集客、2000人弱のお客さまを有料イベントに集めるまでに成長している。
立地や基本設備以外の項目で選ばれる要素を持つパークホテル東京は、2020年以降も、おそらく強いホテルになるだろう。

 なりたい姿を描き、そこに、日々近づける取り組みを日常に据える。
外部環境に左右されない事業を営むには動的なイメージを共有した目標が必要だ。
パークホテル東京の場合は、「日本の美意識が体感できる時空間」になることであった。
自社の施設が目指すもの、動的なイメージはどこら辺にあるだろうか。

 かつてトヨタ自動車は「3年でアメリカに追いつけ」を掲げ、そこに真剣に取り組む社員たちがいた。
多くの人が仕事を粋に感じて改善の一つ上、変化を日常の仕事に位置付けて実践してきたと聞いている。
販売目標が何台とか収益が何億円という前に動的なイメージを共有していた。
今は「走る度に地球をきれいにする」を目指していると言う。

 自分たちが粋に感じる、なりたい姿に日々の仕事で近づけていく。
外部環境に依存しきらない動的な目標設定が、これからの経営に必要になってくるだろう。
景気の波は変動するが、なりたい姿に近づける導線は、蛇行しながらも右肩上がりの線を描ける。
なりたい姿に近づける。
動的な目標を一般的な経営数値とパラレルで動かそう。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 152」2019.10.25】