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COLUMN

いい会社づくり通信

岩瀬商店 明るい生き残り戦略(下)

2020.06.01岡村 衡一郎

 前回、前々回では、岩瀬商店が足元にあった強みを抽象化して新業態を開発したことをお伝えしてきた。
中心にあった技能をもとにメーカーの卸からサービス業への転換を果たしたのだ。
老舗企業の明るいニュースは、地域を駆け巡る。
2019年2月にはTVに、3月新聞に取り上げられる。
地域からは「染めの町・福山」という観光ブランディングを期待されるまで存在感を高めている。

 背景には、染める可能性を360度で開いていこうとする商品・サービスがある。
誌面の都合上で二つの商品、ピンクシャツでいじめ反対、パーソナルカラーでストールをつくれるに限定して紹介しているが、現段階では構想も含めて50の商品・サービスのラインアップを持つ。
思いつくことは何でも形にして展開していくノリのよさが今の岩瀬商店にはあるのだ。

 かつての染料を扱う老舗企業だが元気がないとう雰囲気はない。
それもそうだ。
昔は染料を扱っています、使いませんか以外に主張するものがなかったし市場は縮小均衡だった。
今は、地域に主張する中身がある。
靴を染めませんか。
大切なワンピースよみがえらせます。
なんでもどんな色にも染められます。
たまにはお茶を飲みに来ませんか。
お客さまに歩み寄るための手立てはたくさんある。

 岩瀬商店の生き残りのための戦略は、とにかく明るい。
自分たちの色だしと着色、長年の経験にもとづく技能をお客さまにとっての価値に変えるか。
顧客創造のアクションに手ごたえを感じているから明るいのだ。
岩瀬商店のメンバーは、現実に対応しているのではない。
可能性を探求しているのだ。
だからこそ、斜陽産業での生き残りという、普通に考えれば暗くなるものを明るいものにさせている。

 どの業界も同じである。
自分たちのコア技能をどうとらえるのか。
何を付け加えれば新たな形で花開くのか。
この視点で自分たちを再点検してみてはどうだろう。
以前紹介した「パークホテル東京」は、外国人客の欲求を満たせる技能をアーティストルームに転化させて新たな価値をつくり、青森屋は青森の良さをとことん知っていることを、サービスで表現することで独自性のあるサービスに仕立てあげた。

 自分たちにとっての当たり前は、中心にあるものの抜き出し方とその展開で、相手にとっての不思議、新たな価値に変わる。
岩瀬商店の染め技術の応用的展開は、これから訪れるかもしれない、観光客の縮小マーケットのヒントになるに違いない。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 133」2019.5.31】