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COLUMN

いい会社づくり通信

岩瀬商店 明るい生き残り戦略(中)

2020.05.25岡村 衡一郎

 前回では、斜陽となってきている染料卸売り中心の岩瀬商店が、試行錯誤の取り組みをする中でのヒントをもとに、一般消費者向けのビジネスを展開すべく開業した「ソメラボ」について触れた。
繰り返しになるが、数万から数十万円という卸の商売から、一般消費者向け、数千円の「染体験」を核に生き残りをかけた取り組みとしての開業である。

 体験で飯が食えるか。
卸の会社に、そんなことは無理だ。
「ソメラボ」構想を話し始めたときに真っ先に反対したのはベテランの社員たちであった。
地域のイベントに協力的に参画していた訳でもないし、エンドユーザーから染め直しの依頼を受けたこともないから、ラボ構想の意味が分からない。
現業が先細っていく中で、特段のアイデアはないが、反対なのだ。

 岩瀬社長が、構想を進めていく中で、ベテラン社員の多くが辞めていってしまった。
辞めていってしまったことは、岩瀬社長にとって転機になったそうだ。
当時はとても苦しかったが、求人広告に、こんなことをしたい協力者求むと、本気のメッセージにつながった。
新たな仲間を募る呼びかけは、自分自身と地域のまだ見ぬお客さまへのメッセージとして、今も大切にしている。

 新たな仲間と考えて地域に打ち出した広告がある(岩瀬商店: https://www.iwase-shoten.co.jp/)。
日本初カジュアル染体験。
老舗染料屋さんがアドバイス。
300色から 選び放題使い放題。
染めの町福山から自分色をプレゼント。
岩瀬社長にとっては、「お客さまと染めの関係をこうしていきます」という地域への新たな貢献を宣言したメッセージである。
オープンして数カ月「ソメラボ」への客足が途切れることはない。
ここ数年間の岩瀬社長のもがきが花を開きつつある。

 辞めていってしまった社員は、営業が好きでも、染める可能性を広げる仕事は好きではなかった。
今は、染めを楽しめる、広げることが好きな社員と仕事ができている。
岩瀬社長の新構想に共感するメンバーとの取り組みは、加速度を増している。
独りぼっちの試行錯誤は終わり仲間との生き残り戦略は、明るい企てに変わってきた。

 お客さまの大切なものを染め直す仕事、お客さまにぴったりの色を見つける仕事は、岩瀬商店の“数十万色” 以上を開発する技能と、対象の素材への浸透力という研究の成果に支えられる。
岩瀬社長は、試行錯誤の中で、現業を支えていた色の開発と着色の技能という足元にあった強みを抽象化して、新たな活用の仕方を見出したのだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 132」2019.5.24】