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COLUMN

いい会社づくり通信

たった一部屋からの偉業

2019.03.12岡村 衡一郎

「400 人の力が結集した本当にすごい」。
パークホテル東京、宿泊グループ支配人の小野さんはうれしそうだ。
宿泊客以外のお客さまを約 2000 人、有料で集められた○○イベントは、客室 270 室の中規模ホテルでは異例の出来事だと言えるだろう。
お客さまは、彼らの一品、客室に造形された日本の美、アーティストルームの数々を身近に見ようと全国から集まってくれた。

 パークホテル東京が「日本の美意識が体感できる時空間」になる、と決めた 5 年前、その象徴として、相撲をモチーフとした客室アートを商品化した。
相撲部屋は大きな反響をよび○○の起点になる。
そこから、禅ルーム、おたふく、竹林登り龍、一部屋一部屋アーティストとともにつくり込んできた。
どれも日本の美意識を客室アートで表現する手の込んだ作品ばかりだ。
製作期間に 1 年を要した作品もある。

 5 年前と比較すれば、売り上げ、客単価、稼働率、業績の三大指標をすべて伸ばすだけでなく、転職によるキャリアップが業界慣習の中、スタッフの定着率は業界平均の倍くらいになった。
ホテルの売りをつくる取り組みに参画できる環境は、与えられた仕事を遂行するのとは別次元の面白味があるし、アーティストとの取り組みは、ホテルスタッフの思考を刺激してくれる。

 相撲部屋たった一部屋からはじまった、日本の美意識が体感できる時空間を目指したプロジェクトは、スタッフの意識を徐々に変え、協力者を増やし、アートと言えばパークホテル東京と国内外に知れ渡るまでになった。
そして、何よりの成果は、変化を起こす力を身に付けたことである。
日本の美意識が体感できる時空間に近づいているかを判断基準に、接客サービス、レストラン、ラウンジ、イベントを社内外 300 名の協力者とともに見直し続けている。

 日本の美意識が体感できる時空間の象徴としてのアーティストルーム。
 日本の美意識が体感できる時空間だと、ホテルに入った瞬間感じられる企画展示イベント。
 日本の美意識が体感できる時空間で行なわれる展示案内ミニツアー。
 日本の美意識が体感できる時空間を料理やドリンクで感じるメニュー。
 日本の美意識が体感できる時空間ならではのおもてなし。

 ホテルのコンセプトとこれらの連関が具体的で強くなっていけばいくほど、参画する仲間は増えてくるし、アイデアも湧いてくる。
スタッフミーティングの中心話題は、「もっとコンセプトに近づけるために、もっと楽しんでもらえるには何ができるか」。
パークホテル東京の革新の原動力は、自分たちの手でホテルをより良い方向に変えていける喜びにある。

 5 年前、プロジェクト発足当時に夢みたいに語っていたことは確実に実現しつつある。
「美術館にホテルがついている」と言っていた企画グループ鈴木さん。
「いつも新しさがあるホテルにしたい」と語っていた料飲グループ藤川さん。
人事の田中さんは「誇りがホテル仕事に」と熱く話していた。
それぞれの思いの延長線上に、パークホテル東京の偉業が成し遂げられた。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 077」2018.2.16】