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COLUMN

いい会社づくり通信

世界一の仕事をする人のモノの見方と取り組み方

2018.12.17岡村 衡一郎

 ある技術ユニットの QCDで世界一の値を持つ人がいる。
その人は世界一を取るべく仕事を進める。
当たり前であるが世界一を狙うから世界一になれるのだ。
皆が知っている仕事のイロハ、目標設定、構想検討、構想実行の質が一段高いところにある。
目標を持たずに仕事をしている人は少ないだろうし、どうするのかも考えている。
しかし世界一の値をいくつも持っている彼の当たり前のレベルは常識を超えているのだ。

 目標設定を言葉どおりに考えれば、仕事の現状となりたい姿の間を埋めるための対象となるだろう。
売り上げ目標や利益目標などは一般的だ。
これらの目標の欠点を挙げるとすれば、世界一や業界一との相対的な比較が薄いことであるのと、結果系の目標で原因系の目標ではないところだ。

 彼にとっての目標設定は、世界一となれる原因を目標に設定している。
これが達成できれば、世界一になれるという値を、あらゆるライバルを比較した上で設定している。
目標は一つの壁であり、達成できたら世界一になれるのかのジャッジポイントである。

 世界一へのターゲットがはっきりした段階で、どう実現していくのかの構想検討に入る。
できるかどうかを先には考えない。
どうすればできるのか構想するのである。
現状のリソースだけでは、たどり着けない値に目標を置くのが彼の流儀だから、彼にとっては当たり前である。
しかし、多くの場合、現有のリソースを先に考慮に入れてから目標を設定してしまう。

 繰り返しになるが、彼にとっての目標は「この値なら金メダルをとれる」ところに置いていることだ。
目標を定めてから構想を組み上げていく順番を決して崩さない。
そして実行段階においては、「チャレンジとは冒険ではない」という彼の口ぐせ通り、チャンレンジを無謀な冒険にしない
仕掛けを忘れない。
そのために構想段階では複数の保険をしっかりと対策に練り込んでいる。
A がだめだったら B に。B がだめだったら C に。
構想通りに進まなかったときのためのバックアップの仕掛けを複層的に準備しておくのだ。

 優れた施策とそうでないものを分けるのは、表にある対策ではなく、何かのエラーを吸収できるバックアップシステムにある。
多くの対策が進まなくなる理由は、A の対策がうまくいかなかったときの次の準備が不足している点にある。
そして彼は構想を一人の頭では考えない。
あらゆる人の頭脳を駆使して構想を練り上げていくのである。
プア―なクリエイティブより、優れたイミテーション。
過去のあらゆる施策をひも解いて、同業他社や異業種の取り組みを調べ抜いてヒントとなる材料を探してから構想を組み上げる。

「プア―なクリエーションより、優れたイミテーションの掛け合わせ」。
彼の構想はこの思想に支えられる。
実際にノーベル賞を取る人ほど論文は読み切るし、アイデアが出せる人ほど他社の取り組みに敏感だ。

 彼の仕事の進め方をヒントに、普段使いなれた「目標設定」「構想検討」「検討実行」という言葉をもう一度見直してみよう。
世界をキーワードに見すえることで、どこかに自分の仕事を発展させるヒントがあるはずだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 066」2017.11.17】