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COLUMN

いい会社づくり通信

誰かの成功事例を私たちのメソッドにする

2018.08.29岡村 衡一郎

 うまくいったことを共有しよう。
成功事例の共有に意味を感じ取り組んでいる企業も多いと思う。
いい仕事の事例は聞いていて気持ちがいい。
勇気ももらえ盛り上がる。
年に数回の表彰にも、もってこいだ。
しかしポイントになるのは、盛り上がりではなく再現性だ。
誰かの好事例がメンバーの仕事のインプットになり、ほかの場所、ほかの人で再現されるかどうかにある。

 この提案で受注できました。
お客さまが喜んでくれました。
といった事実共有だけで終えていれば、好事例はただの事柄にすぎない。
そして、あの人だからできたと。
特殊の事例で処理される可能性もある。
再現性を高めていくための成功事例の共有は、必要条件と十分条件の双方を押さえることがポイントになる。
使用前、使用後の変化の話だけではほかの人へのバトンにならない。

 事例を通じて考えてみよう。
A社は毎月数十枚の好事例のレポートを生かし切れていない状況にあった。
レポートの内容はB社に○○という商品が売れました。
C社の問題を解決する特注品を納品しました。
受注した事実は素晴らしい。
しかし、レポートを受け取るメンバーから見れば、仲間が頑張った報告の域をでることはなかった。
「好事例レポート」から「水平展開レポート」へ、A社は共有のやり方を一新することにした。

 図1Aは以前のスタイル、図1Bが現在のスタイルになる。
水平展開に向けたポイントは三つある。
①紙ベースのやり取りをやめ、年に数回、膝を突き合わせてやり取りをすることにした。
②レポートの内容を見直した。
以前のレポートに抜けていた因果関係を振り返り言語化した。
必要条件としてのお客さま側からの理由、十分条件としての自分たちの頑張りである。
③背景と理由を知った上で自分が担当しているお役様への展開方法を話し合った。

 地域が違う。
お客さまが違う。
あの人だからできた。
これらは成功事例の共有、ヨコ展開を図ろうとする上での壁になる。
地域が違うのも、お客さまが違うのも、担当者の特徴がでるのも事実だ。
違いの指摘をしてしまう、自分の方が頑張っている認識からずれられないのは、人間のしようもないところなのかもしれない。
だからこそ、担当以外のお客さまに思いをはせて、自分ごとにするには工夫がいる。

 本来、成功事例は宝のはずである。
意図して全員で取り組めば宝の山になる。
A社も少しずつえはあるが、担当領域以外での最高の仕事を、自分ごととして再現できるようになってきた。
業績も働きがいも上向きつつある。

 ○○さんのメソッドは、自分たちの誇り。
メソッドはみんなの財産。
こういった企業文化がつくれるかにある。

050図1

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 050」2017.7.14】