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COLUMN

いい会社づくり通信

イノベーションへの原動力はどこで束なるのか

2018.09.03岡村 衡一郎

 合理的な側面からだけではイノベーションは生まれない。
「こうなってやろう」という信念に基づく試行錯誤から生まれる結果だと言える。
画像はアルミックイマイの熟練職人による取り組みの開始を告げるチラシ。
アルミ財アール曲げ加工で日本一になる。
能動的で詳細な挑戦宣言だ。

 「アルミのアール曲げ加工なら何でおお任せください」。
チラシには自信に満ちあふれたメッセージを市場に打ち出している。
背景には「この領域で日本一を目指す」と決めた職人の意思がある。
今までは営業マン経由で来ていた依頼を自分たちが取りに行き、受注を倍に増やす。
ここを第一ハードルに取り組みを立ち上げた。

 前に出るのを躊躇していた職人集団が変われたのには理由がある。
今年度より掲げられた「どうせやるなら世界一」という経営方針のもと、ある程度支持を得ている技術を日本一にするバーを自分たちで設定したことで、営業もかねる商売人X職人の職人集団になれたことだ。

 日本一にどうすればなれるのか。
答えは手探りでしか分からない。
彼らはまず手はじめに、アルミアール加工の技術が最も反映する商品で難しいものに挑戦、そして、直径200cmの丸窓、世界最小クラスの小さなものを試行錯誤の上に完成させた。
小さなものができることを商品で証明した上で、曲げるプロとしての問題解決力をアピールしている。

 「何でもお任せ」というコピーと「世界最小の曲げ加工商品」というポップは、自社の変化をけん引する。
お客さまからの難しい要望をマグネットのように引き寄せ、分業に埋もれない仕事のモデルになっている。
彼らの取り組みは、商品部の機能も営業部の機能も併せて担う。
営業の後ろに陣取っていた職人が前に出て受注しようとする姿勢が、部門の間に落ちる仕事をゼロに近づけている。

 その企業にとって、市場にとっての当たり前を変える。
挑戦的で分業的でない取り組みの結果起こせるのがイノベーションだ。
変化へのアクションを駆り立てるのは、挑戦的な目標だ。
アルミックイマイの商売人X職人の職人集団の視野は日本を広く見ている。
自分たちにできない加工をゼロにする。
役割分担を超えて動く人たちの意思が、イノベーティブな目標のもとに集まっている。

 世界一、日本一に向かった取り組みは、変化の先頭を走ろうとする実践である。
もちろん、詳細な計画は立てられないし時間軸は図りにくい。
しかし90%の精度で組める計画なら、すでに実践していることの繰り返しで創意工夫を必要とはしないだろう。
粋に感じ挑戦に値する目標設定がイノベーションへの原動力を喚起し、互いの試行錯誤を歓迎するチームの力を高めていくのだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 051」2017.7.21】