お客さまを理解するためのフィルターを持つ
2018.08.06岡村 衡一郎
「お客さまを理解しようとしているか」と聞かれれば、例外なく「している」と答えるビジネスマンばかりだろう。
背景には各社各様の実践がある。お客さまの声を聞くようにしている。
何が売れ、何が売れていないかといった結果から対策を考えているなどだ。
しかし、理解する取り組みが上手な繁盛企業は、お客さまを理解するフィルターの精度に違いがある。
理解がうまい企業は自社を相対化する能力が高い。
複数いるお客さまの欲求を分けて考え、それぞれのお客さま層にとっての最適値を出そうとする。
逆に繁盛に陰りがみえる企業は、自分にこだわって相手が見えにくくなっている。
話が若干難しくなってきたが、吉永小百合さんと山本リンダさんの比較で考えてもらえばその違いが分かると思う。
両者ともに偉大なスターである。
山本リンダさんは、うららうららで、エネルギーをあたえた。
吉永小百合さんは時代にマッチする演技で感動を与え、成熟期の今、昔とは異なるトーンの演技で活躍を続けている。
自身の芯は変えずに相手への適応のし方を絶えず考えている小百合さんは今もスターであり続ける。
演技力を相対的にどう発揮していけばいいのかを考え、時代に応じて変えるのが、自己の相対化能力だ。
企業も同じことである。
相手から支持がなければ続かない。
マーケットを考えながら、自分たちをずらし続けていく必要がある。
同じところにとどまった、かつてのブランドはすべて衰退していったのだ。
自社の相対化能力を高めるためには、情報の取り方を変える図 1と図 2 のような今のお客さまを理解し、これからのお客さまをつかむためのフィルターがいる。
図 1 は今見え隠れするお客さまを理解するための 16ボックスだ。
図 2 のフィルターは、これからの変化をとらえる情報の窓、自社の外側で起こっていることをとらえる16 の窓だ。
図 1 は、現在支持されているお客さま層はなるべく客観的に考えていくための道具だ。
まずは、横軸にお客さまの好みを三つに分ける。
次に今支持されている属性と自分たちでそうさせることができた原因や、できていない理由をあぶりだす。
そして対策を明らかにして取り組んでいく。
自社の強みを核に相手本位で広げていくための作戦のベースをなす道具だ。
図 2 は、よりマクロに市場との関係を振り返り、修正をかけていくための道具になる。
自社の支持されている理由、他社はどうか。
そして、双方を利用しない人、まだ見ぬお客さまにとって必要となる存在に自分たちを広げていくには何ができるのか。
時間軸と空間軸をより広くとって変化の方向を考えていける。
企業は得手にて滅びる。
原因は過去の支持を独善的にみる作用が強くなるためである。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 047」2017.6.16】