やめたくない仕事そのものが変化の原動力
2017.12.25岡村 衡一郎
せっかく採用した人が辞めていく。
育った段階でいなくなってしまう。
これらの悩みを抱えるマネジャーは多くいらっしゃるのではないだろうか。
転職サイトのテレビCM や広告も、その存在を知らせるためのものではなくなった。
自社サイトの違いを端的に伝えることに注力している。
すでに使用している人への告知へと変わっている。
転職を考えはじめている人にとっての促進材料は豊富に手に入る。
待遇面はもちろんインターネットを介した情報交換で知りうる情報量は各段に増えているのは確認するまでもないだろう。
転職市場が活気づくなか企業側の取り組みは、仕事そのものでの質差で辞めたくない、続けていきたい仕事にしていける環境づくりになる。
お金で移ってきた人はお金で去っていく。
ブランドにあこがれ入社してくる人は新たなブランドへ流れていく。
自らが主役となり貢献感、成長感を高めていける。
そして転職の大きな理由になりうる人間関係を「仲の良いケンカ」ができる状態に保っていくバックアップシステムも多くの企業で忘れられがちだが重要だ。
いい仕事をいい仲間で実践できている実感が報酬。
当たり前だが作業を委託しているような雰囲気では決してなしえないものだ。
一般的には人が集まりづらいとされている自動車販売業の中で、人が集まり定着し成長し続けている某社の事例を参考に、辞めたくない仕事になるための力点を整理していきたい。
「失敗しろ」、「車を見る前にお客さまを見る」、「上から見下ろさない下から見上げない」が某社の合言葉だ。
失敗なしはトライなしの証しであり、お客さまの車生活を深く理解し良き方向にするのが存在意義であり、車を売るのが仕事ではない。
そもそもトライとチーム力は密接の関係にあるからだ。
大きな存在意義と今の仕事の間には絶えず工夫の余地がある。
メンテナンスの対応は適切だったのか。
新しい車はどんなニーズのお客さまにぴったりなのか。
今の季節にぴったりのお茶受けはどんなものが喜ばれるのか。
お客さまが感動し提供しているコンテンツは、自分たちもかっこいいと思えるのか。
この余白を埋めるためのトライが中心にある現場は、仕事が報酬に変わる。
「上から見下ろさない下から見上げない」。
某社では難しい課題に挑むチーム力を高めるための仕組みも合わせて充実させている。
業務時間内にかつ残業せずに全員で集まって膝をつき合わせて共に考える対話を繰り返し行なっているのだ。
全員がリーダーシップとフォロワーシップを発揮するための土壌づくりに全就業時間1/8
を投資している。
人は同じことを3年間繰り返し集中して行なっていけば、プロレベルの8掛けの仕事をこなせるようになるという。
半面マンネリに陥りやすい、転職の区切りとなる時間軸でもある。
某社社員にやむをえない事情で退職し数年後に戻ってきた人がいる。
ここが一番成長できるし仲間がいるということが改めて分かったのだそうだ。
某社は毎年CS表彰を受けるサービス優良企業だ。
新車販売に左右されない利益はもちろんだが、それ以上に「辞めたくない」「職場に居続けたくなる仕事」が、サービスの革新の原動力になっている。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 017」2016.10.14】