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COLUMN

いい会社づくり通信

攻守両立への力点

2018.01.10

 攻めと守り。
対立するものの統合がリーダーに求められる。
とにかく挑戦では危ういし、守りに徹していては未来が拓ひらけない。
大切なのは攻めながら守れる、守りながら攻められるといった状態に日常の仕事を仕上げていくことになるだろう。
本コラムでは攻守両立の力点についてホテルのサービスにも応用できる自動車会社の事例を交えながら考えていきたい。

 トヨタ自動車は、変える、守る、試す、三本の柱が変化を支えるイノベーションカンパニーだ。
生産効率でいくつもの世界一の値をたたき出す仕事の背景に、徹底的な改善、作業手順を守る習慣、まずやってみるというグランドルールがある。
変えない、守らないのはご法度で、アイデアを思いついたら即試す、長年積み上げてきた変化の作法に学ぶところがある。

 守ると変える、双方が成り立つのには理由がある。
トヨタの人にとって、仕事とは作業+改善+変化だ。
作業をしているだけでは仕事をしていないことになる。
作業しながら、もっといい形を模索する改善を行ない。
業界ダントツにつながるアイデアを考え続けている。
世界一という大きな目標に近づく新たな工程を立場や肩書に関係なく完成に向け仕事を進める。

 意識的か無意識かは別にして守り仕事の組織は多い。
ルール説明に終始するお役所仕事が揶やゆ揄された言い方だが、貴社の営業プロセス、商品開発プロセス、マニュアルが3年前のままだとしたら、変革実践は黄色信号だ。
過去最良の進め方を仕組み化、手順化したものに縛られている。
仕事=作業のままにプラスの改善と変化が後回しになっている可能性がある。

 仕事の仕組み、営業プロセス、商品開発プロセスやマニュ
アルなどは、自分たちのレベルを最良に保つための道具である。
大工が家を建てる際に用いる大工道具のように仕事の手順に大きな影響を与える。
しかし実際は仕組みが足かせとなるケースは少なくない。
過去の成功体験のパッケージになり下がり、より早く、よりよく仕上げる道具の探求が忘れられている。

 刷新の苦手な組織は変えるか変えないかのゼロサム思考で大掛かりな打ち手を好む。
曖昧さを許容し進めるスペースがない固まった仕組みだ。
トヨタ自動車にとって手順書は生きものだ。
まずやってみる。
手順書を書き換える前の試行錯誤が各所各人の仕事の中に内包される。
互いのトライアンドエラーをインプットによき手順に絶えず生まれ変わらせている。

 攻めと守りの両立。
この論点と仕事で使う道具は切り離さない方がいい。
道具の使い方が仕事のし方を意識しなくとも縛っていくからである。
共有化された手順を守るのは、これ以上、下がらない守りの要であり、よりよき手順を考え刷新していくことが攻めの具体的アクションに変わる。
手順や仕組みを見直すのは、最良なチーム仕事への革新につながる。
「攻めのサービスを」や「サービスのばらつきをなくそう」と訴えても姿勢を変えるのは難しい。
作業の委託ではない現場、仕事が作業+改善+変化の三本柱になれば攻守の両立に近づく。
攻める必然性になる大きな目標、手順書を書き換える当事者の参画、試せるスペースが要。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 018」2016.10.21】