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COLUMN

いい会社づくり通信

福山観光旅行社の挑戦がはじまった

2022.04.05岡村 衡一郎

 2021 年 12 月 10日㈮福山観光旅行の新しい取り組み、地元企業のイノベーション視察ツアーの第 1 回目が行なわれた。
長年、社員旅行などのサポートをしてきた背景があるから、地元企業に詳しいことを強みに企画された新サービスである。
福山から人を送り出すだけではなく、福山に人を呼び込みたい。
観光の意味を形にしたい後継者の漆川さんの熱い思いから本企画は始まった。

 観光の語源は、地域にある豊かさを観て光をあてていくこと。
社名にもある福山観光旅行、旅行での貢献はできているが、観光での貢献は十分ではない。
コロナ前に自転車の詳しい漆川さんは、インバウンドでのサイクルツーリズムを部分的に成功させていた。
海外から自転車旅行のサービスで、やっと地元に観光事業で貢献できると思っていたやさきに、インバウンドはクローズとなる。

 私も参加させていただいたが視察先計 4カ所の選定基準がいい。
すべての企業が右肩下がりの市場に立ち向かい、イノベーションを起こしている。
加えて視察先との関係が非常に近いから話してくれる内容はすべてが本音であった。
よそゆきの情報提供などは一切ないから面白い。
うまくいっていることも、変化の過程での苦労していることも、すべてオープンに話してくれた。

 NASAとの取り引きまでものにしている地元鉄工所。
言葉もわからないまま単身一人でフランスに乗り込み地元食材フレンチレストランを開業させたオーナーシェフ。
かつて栄えた染物の町福山で 150 年染料を取り扱う企業の生き残り戦略。
地元の素材をふんだんに泊まると同時に地元の名産、いいところの紹介機能を担うホテル。
これらの 4 社をまわりながら、間、間のバス移動では、福山の産業歴史、江戸時代から現代までの解説を漆川さんは行なっていた。

 福山の産業の歴史を聞くことで、鉄と繊維の街として、なぜ福山が栄えていったのか、タイムマシンに乗ったような感じで見えてくる。
視察先の鉄工所や染料会社が、なぜ、この地にある必然性が見えてくる。
かつてたくさんの会社があった中から十数社への絞られてくる中での話は、変わるものだけが生き残るという変化の原則を体感させてくれる。
生き残り変わり続ける2社に共通するのは、お客さまの要望は絶対に断らない、を戦略的に取り組んできたことであった。

「できます、少し時間をください」。
お客さまの問題解決や課題解決に自社だけではできないことでも、必ず他社に協力依頼を複数かけて、答えを提示し続けている。
お客さまは自社にできそうだから言ってくれているのだから、今すぐに即答できないことでも、答えが見つかる。
お客さまからの予期せぬ依頼をイノベーションの種にしてきたから、変われている。

 フレンチレストランは地元食材のレシピで、ホテルは内装、リネン、食材を地元素材で。
すでにあるものへのスポットライトの当て方、新しい使用用途を開拓していた。
地域のすでにあるものの再加工を、そこにしかない豊かさというお客さまの感動へつなげていった。
イノベーションは、あるものからないものを作り出す取り組みであることを再認識させてくれる。

 そして福山観光旅行も本サービスを媒介に変わっていくに違いない。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 254」2022.2.4】