地域の課題解決に挑む
2022.03.22岡村 衡一郎
流通業 A 社は全国に店舗を持っている。
若い女性に限らず、多くの人が知っている大企業だ。
メジャーな大企業が儲かるか儲からないか、はっきりとした答えが出ていない段階で地域課題解決に取り組む姿勢に感動した。
私は彼らの活動を実際に見に行ってみた。
山間部への移動販売、地域ブランドを全国発信していく取り組みなど前評判以上のすごさを現場で感じた。
市の中心から車で 70 分。
人気の商品や、その地域のお客さまからリクエストのあった商品をもって、道の駅や公民館などをまわる。
何をもっていけばいいのか。
毎回試行錯誤をしながら、今の季節に必要なものを考えながら、限られたスペースでの品揃えをしているという。
お客さまは定期的にきてくる買い物バスを心待ちにしている人も少なくはない。
当日、初雪が降る中、お客さまが訪れた。
「メガネ拭きある」とお客さまも初めての雪の中で、曇ったメガネを片手に店員さんと楽しそうにコミュニケーションをとっていた。
店員さんも大型店で、なかなか感じ取れないお客さまとの近さを感じているという。
自分の仕事が、自分達の商品が、お客さまの生活にどのように役立っているのかを、深く実感できる良さがあるそうだ。
一回の移動販売で大きく黒字になることはほぼないだろう。
しかし彼らは、その活動を止めない。
通常の流通業の店長は店舗の業績向上に責任を持つが、彼らは店舗責任者のことをコミュニティーマネジャーと呼ぶ。
自店の業績のことだけを考えるのではなく、地域のコミュニティーをマネジメントして、人をつないで地域課題解決の流れを発展させていくことに責任を担う。
地域の人たちの幸せがあっての自分達。
だから自分達がその幸せを増やす。
困りごとの解決策を事業の形態を変えてでも見つけていく。
このようなことを企業レベルで、且つ、戦略的に取り組んでいるところは少ないだろう。
本店と支店は、規模はちがえど内容はほぼ一緒。
自社の成功フォーマットでエリア拡大のために店舗展開をしている企業の方が圧倒的に多い。
店舗責任者のコミュニティーマネジャーの仕事はハイブリットだ。
自店の業績はもちろんのこと、地域の問題解決に向けた取り組みに知恵を出し、人を巻き込んで、流れをつくる。
自社にある販売能力、商品化能力、スペース、人、知名度、有形無形の資産のすべてを駆使しながら、自社だけで解けない問題に挑んでいる。
人口が減っていく。
地域の人と人とのつながりが弱まっている。
路線バスがなくなり人の移動手段がなくなってしまう。
若い人がもどってきにくい。
これらの問題に対して解決に関わっていくのは、難しいと考えれば難しくなるかもしれないが、やろうと思えばできる。
やりはじめれば、同志の連携がどんどん増えていく。
彼らの取り組みを見て確信した。
買い物バスはその第一歩にすぎない。
買い物バスをアイコンに、地域の創業まもない企業とのコラボや子供の教育環境の充実のための空間づくり、地域材料をつかった商品開発などに活動の幅を広げている。
コミュニティーマネジャーは、地域の問題解決に関わりたい人とも言い換えられる。
その連携を私が担えば地域の豊かさは実現できると熱く語っていた。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 253」2022.1.27】