企画機能・商品化機能・販売機能の再構築 ⑵
2022.01.26岡村 衡一郎
人は、企業は、何を見て、何を大切にして、どんなアクションをとっていくのかで成果も社風も決まってくる。
下請け体質、依頼主の要望に忠実に仕事をしていれば、活気や自信のようなものは失われがちになっていく。
逆にビジネスの構造が下請けでも、そこにしか頼めないといった価値や創造性が加味されれば、ブランドがみなぎった社風になっていくし、パートナーとしてお客さまに頼られていく。
前号では、OEM 中心の下着メーカー小林縫製さんが、自社企画商品を地域に販売することをはじめたこと。
福山から県外への旅行手配してきた福山観光さんが、福山に訪れる人を増やすための取り組みをはじめたことを少しだけ触れた。
はじめに小林縫製さんの自分たちの革新につながる取り組みについて。
続いて、福山観光さんの行く人だけでなく、来る人を増やすトライについて触れていきたい。
前号で、分業は右肩上がりのマーケットを前提として、効率的にものごとを進めていく仕組みとだと触れた。
効率が高くていいという意見もあっていい。
しかし問題にしたいのは、担当している機能の中に埋没してしまうことだ。
販売する人、つくる人、企画する人と、機能分担して事業に臨んでいくのが分業だ。
販売するだけ、つくるだけ、企画するだけでは、どうしても視野が狭くなっていくし、価値を生み出す足腰が弱くなってしまう。
例えば、一部のホテル・旅館では、商売のベースをつくっていく、リピート客にアンテナが低い。
事業の重要な要素なのにもかかわらずだ。
理由は、販売担当者以外が集客を取り組み、お客さまを集めることの大変さを体感値として持ちにくいからだろう。
厳しい市場環境の中でも、来てくれている人は、また来る可能性が高いのだが、フロントでのアプローチはできているだろうか。
生産工場中心で他社企画製品をつくっている場合は、自分たちで価値をつくり出せているにも関わらず、実感は持ちにくくなってしまう。
お客さまが価値を感じる瞬間に物理的に立ち会うことが少ないからだ。
かつての小林縫製さんも、お客さまが価値を感じる場面を体感できる機会が少なかった。
だから、いい商品をつくっているのにもかかわらず、その実感が低かったように見えた。
相手先企画商品をつくるのが事業の中心であるから、当然と言えば当然なのかもしれない。
自社商品をつくる。
そのために、マスクをつくってみたり、機能性インナーに挑戦してみたりと、さまざまな取り組みを行なっていた。
質のいいものがつくれるから、使ってくれた人の満足度は高かった。
しかしマスクなどは特にそうだが、マーケットが膨らめばライバル企業がたくさん出現する。
自社販売するという技能をこれから身に着けようとしている小林縫製さんにとっては不利な状況が続く。
せっかく獲得できた販路も、他社との競争の中に引きずりこまれてしまうのだ。
自社でコントロールできる商材と販路の展開。
社長の小林さんは、OEM 事業に自社企画商品販売をプラスするべく新たな展開を考えはじめる。
ああでもない、こうでもないという出口の見つからない議論への突破口が、ベテラン社員さんの一言で見えてきた。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 246」2021.11.26】