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COLUMN

いい会社づくり通信

企画機能・商品化機能・販売機能の再構築 (3)

2022.01.28岡村 衡一郎

「うちには会長がつくったショーツがあるじゃない。私は、ずっとはいているし、これ以上のものな見つからないの」。

 私は、ベテラン社員さんの一言「会長ショーツがあるじゃない」を聞いた瞬間に小林縫製さんがよりよき方向性に変わっていくトリガーを発見したと心が躍った。というのは、下着のプロが長年愛着を持っている商品は、万人に支持される可能性が高いからだ。それに小林社長が掲げる「自社商品で現状突破」という方針にもフィットしている。

 足元に存在している商品は、当事者の方々にとっての水や空気のように、あることが当たり前の前提になっているために、その商品のすばらしさを深掘していくことは少ない。
これは多くの企業の業績支援をしていた過程で、数多く感じてきたことだ。
私は次のような質問を投げかけながら、皆さんにとっての会長ショーツとは何なのかを一緒に考えていった。
「なんで長年着用されているのですか」。
「どういった経緯でできた商品なのですか」。
「誰が買ってくれているのですか」。
「皆さん方にとって会長ショーツとは何なのですか」。

 メンバーからは次のような意見がでてきた。

「これ以上はいていることが自然なものはない」。
「包み込んでくれる安心感がある」。
「いろいろショーツは持っているけど、こればかりはいているの」。
「随分前のことになるけれど、いいものをつくって、という得意先の要望を受けて会長がつくったもの」。
「社内販売やお得意様へのお礼の品として表には出してこなかった」。
「私はこのショーツが一番好き」。
「国内縫製でトランプのように寸分の狂いなく積み重なる」。

 私は質問を続けた。
「なんで表に出して、地元のお客さまに売ってこなかったのですか」。
皆さんからの回答は「……」。

「……」には、補正下着がうちの商品だからとか、直販はやったことがないからとか、ライバルがいっぱいいて無理だと思っていたなどの意見が多かったが、会長ショーツのすばらしさを再認識したメンバーにとっては、すべてが思い込みであった。

 なんとかしたい思いとなんとかできるだろう商品が結びつくと強い。
小林縫製さんは早速、自社工場での直売企画を実行に移した。
工場直売店オープンを近々のお客さまに伝えるためのチラシを準備、会長ショーツをブランドにした「100年ショーツ」を前面に押し出した。
3日間の目標は1,000枚。
小売りは初めてというメンバーは、知人に声をかけ、みんなで売場をつくり、開催に漕ぎつけた。
次号に続く。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 247」2021.12.3】