地域一番企業が大切にしているサービスの軸
2021.11.26岡村 衡一郎
訪問介護マッサージ業の A 社は地域地番企業になった。
該当エリアで、A 社の提供するサービスを必要とする人の支持を 3人 1 人の割合で得ている。
マッサージの施術の良さ、体の機能維持、回復はもちろんのこと、利用者さんと接する際に大切にしていることが、他社と大きな差を生んでいる。
利用者さんと気持ちが通じ合えるようになる技能を磨いているからだ。
A 社が大切にしているサービスの軸は「相手が大切にしているものを大切にする」である。
プロの意見やり方の押し付けではなく、相手にとことん合わせていく。
マッサージの施術に入る前、施術をしながら相手の反応を観察しながら、相手の欲しいやり方で、スピードで、強さで、間合いを調整する。
施術後には、相手の表情と体からのサインを感じ成果を確認する。
「相手が大切にしているものを大切にする」のは、サービス業に従事する方々にとって普遍的なものだと思う。
ずいぶん昔の話になるが、東亜国内航空(JAS)のサービスは評判がよかった。
他の広告会社との比較 CS 調査にこそ成果が表れていた。
当時の JAS の合言葉は「グットスピードオールウエイズ」相手が求めるスピードでサービスを提供するであった。
航空チケットのチェックインも、空港内での道案内も、相手が求めるスピードは異なる。
目の前にいるビジネスマンにとって、家族づれの方にとって、口調や手の動かし方、席の案内と相手に合せていく努力を積み重ねていたのだ。
私も20 代前半の初出張の際に、羽田―千歳に心細く乗っていた際に機内で「札幌の出張は初めてですか」と声をかけていただき、千歳―札幌間の行き方を教えてもらって、安心感が高まったのをよく覚えている。
話を A 社に戻そう。
A 社にこんなエピソードがあった。
介護施設の利用者の方が病院にいくのを付き添う仕事があった時、A社のスタッフは、白衣を脱いで、準備していたよそ行きの服装に着替えて連れ添ったそうだ。
理由は、利用者の方は、旅行や外出することがもともと大好きで、なかなか外出できない中の外出を普段通りに演出したかったからだ。
仕事の服装は白衣。
利用者さんの病院への付き添いは仕事だから、そのままの服装でいっていい、というか、行く方が普通である。
しかし A 社のスタッフは、サービスの軸である「相手が大切にしているものを大切にする」を重んじて、相手がして欲しいであろう服装に合わせた。
明確なリクエストがあった訳ではないから、着替えたことがどれだけ相手に伝わったのかは分からない。
A 社では、こんなシーン共有して、やったことを他の人にとっての学びに変えてスタッフ全員で実践していこうとしている。
だからこそ地域でそのサービスを必要とする人の 3 人に 1 人の支持を得ているしコロナ禍でもサービスの引き合いをいただいている。
「相手が大切にしているものを大切にする」。
サービスの軸は、コミュニケーションの一丁目一番。
意図を伝えることが本質ではない。
意図を十分に伝えることができない利用者さんにとっても、心地よいサービスが提供できうる A 社は、間違いなく顧客コミュニケ―ション抜群の地域一番企業だ。
貴社のサービスの軸はなんですか。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 226」2021.6.25】