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COLUMN

いい会社づくり通信

ヒット商品の背景にある愛情 ⑵

2021.11.22岡村 衡一郎

 前回に引き続き、静岡市にある自転車店サイクルユートピアウミノのお話しを続けたいと思う。
何しろ、甲子園常連校に肩を並べて、決勝戦に出場してくる新設高校の野球部のような強さがあるのがウミノという自転車店だからである。
前回の繰り返しになるが、通学用の自転車は、中学生と高校生の 3 ~ 4 人に 1人以上選ばれている。
そして、いわゆるママチャリから数十万円するロードバイクまで、ほぼすべての自転車で一番の支持を得ているのだからなおすごい。

 ウミノの代表作になるのが、2 台のオリジナル自転車(「ハシゴ」と「アッパー」)。
比較的長い距離を坂道の少ない静岡で、少なくとも3 年、通常 6 年間乗り続けていく学生のための配慮、愛が注ぎ込まれた商品である。
チラシでは①ゆったりポジション②丈夫タイヤ③高品質ステンレス④安心のⅡロックを特徴として訴求している。
特徴は、このほかにも多数あるが最も重要な 4 点になるのだろう。

 趣味品やセミプロのスピード重視ではなく、毎日長く乗るものだから、ポジションはゆったりと。
何より大変なのはパンク、丈夫なタイヤでパンクしにくい。
ウミノでは、パンク現場に急行するサービスも行なっているが、このタイヤ故の自信の表れといえる。
そして、高品質ステンレスのボディーや車軸で長年毎日の使用でも、ガタつかない。
最後は盗難対策としてのⅡロックだ。

 なぜ、中学生高校生の不安を解消した商品として仕立てることができるのだろう。
一番の理由は、自転車好きの岩本社長が、中学生高校生になりきって考え続けているからだ。
それも相対的に相手を通じて自分の考えを検証し続けているから、圧倒的な支持に変わっていく。
自分が自転車好きであることは勿論だが、自分がほしいものをつくるのではない、相手にとってのジャストフィットの探求の仕方が違うのだ。

 自分が月に数百キロ自転車に乗るのは当たり前にやる。
その上で入学時に購入いただいてから卒業までしっかりと使用時点を積極的支えてく中で、自分達の考えが正しかったのかを絶えず検証している。
加えて他社で購入した自転車のメンテナンスを積極的に受け入れ絶対に手を抜いてはいけないポイントを体感的に掴んでいく。

 ナショナルブランド以上のブランドをつくれているのは、次の問いへの探求である。
自分の考えと相手の欲しいものの一致点が、絶えず、市場内で一番できているのか。
この視点で自転車と学生に愛情を注いで改良し続けられた自転車が、ウミノオリジナル自転車である。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 224」2021.6.11】