チェンジするためのコンセプトの見つけ方⑶
2021.10.29岡村 衡一郎
前々回では、図表 1 の「なぜを 5 回」で「気づき」ベースで変革コンセプトを見つけるアプローチをお伝えした。
変化する対象の見つけ方
なぜを 3 回で考えるモードができあがり、残り2 回のなぜで真因を特定していくやり方であった。
前回では引き続き、気づき・おどろき・ひらめきの三つのアプローチの中から、「おどろき」について、前々回に引き続き、事例を通じて考えていきたい。
「おどろき」ベースで業界ダントツのモノづくりをしている食品加工業の会社は、ものづくりの参考となりそうな工場の情報を集めて、機会があれば現地訪問を繰り返し行なっている。
業界内の常識にとらわれず「あの業界だからできるのだ」という考え方は一切しない。
「どうすれば取り入れられるのか」。
この一点で集めた情報、工場見学で学んだことを整理する。
食品加工業の会社は、分かったつもりで終わらせていないのも特徴的だ。
変化するにあたって重要な「まずやってみる」で仮説を検証していくのだ。
自動車業界で学んだこと。
家電業界で学んだこと。
設備製造業でのおどろいたこと。
違う食品を作っている工場での工夫。
これらを、良い悪いと評論せずに実践に移してから、自分たちのものづくりの方法に落とし込んでいく。
「ダメモト」という言葉があるが、これは「ダメでもともと」という意味で変化を味方にする企業では使われていない。
「ダメだったらモトのやり方にもどせばいい」で使われている。
「うちの業界は特別だ」。
この思考はだまっていれば誰だって持ちやすい。
思考の枠をなくしていくためにも、変化が上手な企業は実証主義と言えるし、行動に移す柔軟さがある。
話は少し横にずれるが、十数年前に、変革コンセプトの見つけ方を教えてくれた金田氏と仕事に行く道すがら「ユニクロに勝つはどうしたらいいか」と聞かれた。
答えに窮していると、金田氏は「縫わなければいいのだ」と示唆に富むことを言っていた。
金田氏は衣服業界では服を縫うことが前提になっている点に着目したのだろう。
自動車業界では当たり前のプレスが応用できる確信があったに違いない。
現在、ミシンにガイドをつけて短時間に縫い上げる工程が使われはじめているが、発想はプレス加工の方法に近いと言えるだろう。
自ら変わっていくための一つの源泉が「おどろき」であった。
当たり前だが「おどろき」に触れようとするアクションがなければ、この感覚は得られない。
世界一、日本一には、業種を超えて展開できるヒントが満載だ。
ぜひ足を運んだ体感の中から、変化するための「おどろき」を持って帰ってきてほしい。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 214」2021.3.19】