03-5420-6251

ご相談窓口/9:30〜18:00

COLUMN

いい会社づくり通信

2021年 自己主張の年に⑴

2021.10.05岡村 衡一郎

 濃い霧は、自社の商売の輪郭を見えにくくする。
宿泊業や飲食業の方々に限らず 2021 年の立ち上がりは、霧の中にいるような感覚にあるだろう。
霧の中にいるということは、お客さまに見つけてもらいにくい状況にあるということである。
はっきりとした自己主張をしていなければ、主張が自分本位ではなく相手本位のものでなければ、選ばれないということである。

 20 年末、繁盛している旅館がある。
レストランがある。
商売がある。
例えば、カップルでの利用をとことん考え抜いた旅館である。
ハレの日を彩ることを徹底的に磨き上げたレストランである。
あんパンを媒介にできることすべてを展開するベーカリーである。
利用者さんの生活改善に一丸になる介護マッサージ業である。
市場は、昨対 7 割、自社は繁盛している。

 マクロの市場ダウンは与件、与えられた条件である。
市場環境を嘆いていても、評論的に自社のダウンを語っていても仕方ない。
7 割 8 割経済という与件と実践は別である。
どんな環境でも、カップルで出かける人はいる。
結婚記念日や誕生日はなくならない。
パンは生活にとっての必需品だ。
利用者さんの身体の機能回復サポートは、いつ、なんどきでも必要だ。

 2021 年から先、自社の軸を明らかにして磨き込んでいく必要がある。
祖母に確認したが戦時中でも着物の一番企業は残っていったそうだ。
一番の宝石店もやっていけていたと聞いている。
市場がどんなに冷え込んだときでも、生活に必要なものは、買う人はいることの証しと言える。
そして購買回数が減れば減るほど、お客さまは最も良い買い物ができる所に向かう。

 自社は何を誰に向けて展開していくのか。
これらを複数定めるだけでなく、そこでオンリー・ナンバーワンの存在になっていくためのトライ&ラーンを繰り返し、骨太の軸にしていく。
お客さまにとっての最適値を模索していくことに、仕事のやりがいを追求していける企業体になっていく必要がある。
20 年末に繁盛している企業はどれも、お客さま最適の追求への試行錯誤をアグレッシブに展開している所ばかりだ。

 時代とともに、あんパンとお客さまの関係、大きさ、価格、味、利用シーンは変わる。
あんパンを食べるという行為はなくならない。
カップルが求める旅館の姿は新規性を加えていく側面もあれば、掘り下げていく部分もある。
二人きりで出かける行為は減るかもしれないがなくならない。
ハレの日を祝うための予算も変われば、キャスティングも変わる。
介護技能で解明されていないことはまだまだある。

 彼らの主張は、日本一のあんパンであり、カップルの方にベストの旅館であり、ハレの日を芸術的に彩ることであり、利用者の身体機能の回復に役立つである。
これらを軸に、市場に働きかけ、お客さまと商品・サービスを通じて対話をして、去年とは違う価値を提供している。

 自社は「何を」「誰に」向けて展開していくのか。
どこでオンリー・ナンバーワンの存在になってくのか。
これらを明らかにして、突き詰めて、取り組んでほしい。
22 年 1月に、一年間を振り返ったとき、確実に深化・進化している自分たちになるために。
食べる、泊まるという行為自体は 50 年もなくならない。
そこで選ばれるかどうかだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 206」2021.1.22】