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COLUMN

いい会社づくり通信

不況期に強い その理由

2021.08.10岡村 衡一郎

 不況期に強い商品・サービスには理由がある。
一言で言えば、使用する人にとっての必需品になっているということだ。
必需品という言葉を使うと、石鹸や歯磨き粉、お米などを連想する人もいるかもしれないが、必需品の意味するところをもっと広く考えていこう。
相手のなくならないと言える欲求に対し、価値を提供するモノやコトの中で、生活に欠かせないものを必需品ととらえていこう。

 必需品の反対の言葉は、趣味品になる。
そのとき、その瞬間に、なくても困らないという商品分類で、必需品とは逆にあるのが趣味品だ。
自社の商品・サービスも、大きく分ければ、必需品か趣味品のいずれどちらかに分類できると言えるだろう。
趣味品の典型である高級ブランドの取扱商品の中にも、必需品的に分類できる商品がある。
販売個数が多いものを、必需的欲求を満たしていると考えればいいだろう。

 ポロラフルローレンのポロシャツなどは、趣味品から必需品となって、多くのお客さまとの取引をはじめる起点となったトップアイテムだ。
近年、完売続出のゴディバのコンビニスイーツや「コメダ珈琲」とタッグを組んだ商品なども、趣味品の世界から必需品の世界へ転換していった事例である。
お客さまにとっての必需品化は、不況期というか、これから先の強い商品のメインテーマになるだろう。

 私の関係先に三和物産という葬儀用品の製造販売会社がある。
この会社も、自社を象徴する商品を、趣味品の領域から入って、必需品に転換させていく取り組みを続けている。
結果、三和物産の「桜風」は、不況に強い商品になっている。
「桜風」は、女性専用の棺、お葬式に用いる商品で、さくらが散りゆくはかなさを、表現したものだ。

 デビュー当時は、お葬式は、白木の棺が当たり前で、喪主が棺を選択することは少なかった。
選ぶ人は、社葬や大規模葬の人たちに限られていた状況を変えてきたのである。
出発点は、葬儀に故人らしさを感じ取りにくい式に対する、素朴な違和感だ。
もっと、葬儀は個性があっていいはずだ、喪主さんも、葬儀社さんも、そんな葬儀で最後のお見送りをしたいはずだから。

「桜風」は、最後の贈り物である。
「桜風」は故人との思い出をかみしめるシーンに役立てる。
「桜風」なら、悲しい瞬間にそっと寄り添える。
多くの人になじみのなかった、淡い桜色の四角ではない、時の流れを感じされる流線形のモチーフの棺は、かつて、限られた人が選ぶ棺を、万人が思い出をかみしめながら選ぶ最後の贈り物に「棺」の価値を変えた。

 旅行業界にとってのマイクロツーリズムも、趣味品であるインバウンド需要から、地域の必需品としての旅行に舵をきっての取り組みだ。
気持ちの切り替え、リラックス、再発見、お客さまの〇〇するという行為を、当たり前にできたとき、趣味としての旅行から必需品としての旅行は完成する。

 自社のサービスは、お客さまの〇〇を支えるために存在する。
ここに仮説をもってトライをしてほしい。
不況に強い商品は、このゾーンを模索してきた結果できあがっているものばかりだ。
故人らしい葬儀、おいしいチョコレート、知性を感じる服、これらは非日常にあったものから日常に入り込めた切り口だ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 191」2020.9.18】