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COLUMN

いい会社づくり通信

必需品としての高級レストラン

2021.03.29岡村 衡一郎

 この時期に予約の電話がかかってくるレストランがある。
新型コロナウイルス感染症の影響で、予約のキャンセルが今なら出ているだろうと、お客さまが問い合せをしてくる。
団体客のキャンセルはあるが、それを補う形で、個人利用が増えているという。

 お客さまがレストランを選ぶ理由はいくつかある。
大切なのは、なんかしらの理由で外食をしようと思うときに一番に想起される存在になることだ。
高級レストランに今の時期に行く人は減っているだろう。
これは多くの人はそう思う。
しかし、このレストランは違う。
「今なら行けるだろう」と、問い合わせてきてくれる人がいる。

 今だけの限定メニューを打ち出したのも、個人利用を伸ばせた要因である。
それ以上に大きいのは、どこかに行ったついでによるレストランではなく、ゆっくり食事をしたいというニーズに対する必需品的な存在の店でもあるのだ。

「うちには、そんなものは見つからない」とは思わないでほしい。
どの店にも、必ず、お客さまが、あそこに行くから、前をよく通るから、といったサブ的な理由ではなく、メインの理由はある。
メインの理由には、一番人気があるもの、もしくは、一番売上高が取れている商品の背後に必ずある。

 自店の業績アップをあきらめないでほしい。
そのためには、お客さまが自店を選んでくれている理由を漫然ととらえないことだ。
事例に取り上げたレストランは、コース料理をゆっくりと楽しみたいという理由を今あるメニューの一工夫でさらに応えた。
下限コースの一工夫で客数アップにつなげた。

 どんな外的環境でも、自店の個数一番、売上一番の商品に一工夫が重要なのだ。
そのためには、具体的な商品の販売データを数年分さかのぼり自店への具体的な支持を把握する。
そして、その商品が、もっとお客さまに届くような仕掛けをいくつも考えて、打ち出していく正攻法の業績アップメソッドが必要だ。

 今、あるそば屋さんと、まさに、自店の強みが凝縮された二つの商品を、どう打ち出していくのかの作戦を立てた。
自分たちの強みが凝縮されているそばを男性用に。
年配の女性用に、若い女性用に、子供用に、本当のそば好きにと、五つのメニュー展開を今から始めていく。
新しいメニューの商品名には、店主の名前を入れての新展開である。

 今まで店頭はイメージ重視で、商品名の告知をしてこなかったことを反省して、大きく打ち出し、待ちの商売から転換を図るべく近所へのビラ配りをはじめた。
一日数組であるが、店頭の看板を見て、ビラを見て、新規のお客さまが増えている。
そして常連の方々にも、その店のそばがどんなものなのかが伝わりだしている。

 何をすればいいのか。
今の時期だからこそ悩んでしまうと思うが、外部環境がいいときも、そうでないときも、集客は具体的な商品、自社の強みが凝縮されている商品で行なっていくことに 変わりはない。
きっと、自店の前を通っている人も、近隣にお住まいの人も、お勤めの人も、貴店の強みが凝縮された商品を知りたいし、外食の頻度が下がっている中で選択を間違えたくないと思っているはずだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 174」2020.4.24】