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COLUMN

いい会社づくり通信

いつも新しい自分たちでお客さまをお迎えするには何が必要なのか⑶ 組織について

2021.02.22岡村 衡一郎

 前々回と前回で、創意工夫を日々の仕事で実践し、いつも新しい自分たちでお客さまを迎えていけるようになるための戦略とは何かについて触れた。
パークホテル東京では「日本の美意識が体感できる時空間になる」ことを、旅館・菊乃家では「宮島を盛り上げられる存在になる」ことに戦略的に取り組んでいる。
両社にとっての戦略とは、なりたい姿であり、世の中での役割取りの宣言でもあった。

 多くの企業には、中期経営計画や年度計画の冒頭に「〇〇に貢献する」や「〇〇を目指す」などのスローガンが掲げてある。
しかし両者のように、そこに近づけていくために、どうしていくのかを真に話し合い、近づけていくことを戦略的に取り組んでいるところは、そう多くはないのではないだろうか。
絵にかいた餅と言っては大げさであるが、本当は別のものをめざしているか、やり方の工夫まではつながっていないのである。

 理由としては、次のようなことが考えられる。
新しいことに取り組むには新しいやり方がいる。
このシンプルな考えが、組織的に実践されていないのだ。
パークホテルでは、組織図に定められた役割は最低限の責任という認識がある。
だから一人二役で集客企画に知恵を出すことが日常的に行なわれている。
日本の美意識を体感できる時空間を形にするチームとして組織が運営されているのだ、
加えて社外のアーティストが、日本の美意識を体験できる時空間に近づけていくための協力者としてネットワークされているから、次のアイデアがやむことがない。

 菊乃家では、立場肩書を離れて行なう知恵の場を、オフサイトミーティングと称して毎月行なっている。
オフサイトでは、接客担当の人が料理も考えるし、リネン担当の人がイベント企画を考えて、周りの人と協力して実行に移していくのも日常にある仕事の進め方として定着している。
そして、宮島の観光資源になるだろう人を探して、一緒にサービス開発を行なっていくことをはじめている。

 両社における組織図は日常業務を遂行していく上での必要なものであるが、与えられた役割の中に埋没はしない、なりたい姿に近づけていく上での知恵出しは「役割越え」で、実践には適したチーム編成を行なって、という、運営と変化を同時にこなしていく柔軟なチームとして組織が機能しているのだ。
以前は、料飲と接客との壁や、上司への遠慮などがあったが、変化を日常に位置付ける組織能力を徐々に身に付けていったのだ。

 組織を部門単位係で分けていくのは効率的な運営には向いている。
今までと同じ自分たちでお客さまを出迎えていくことが重要ならば、今までと同じ仕事の進め方の方がいい。
一人が決めたサービスコードを現場で徹底していくには得策だろう。

 サービスを新しくしていける組織には、互いの気づきを共有するための場がある。
そこから生まれたアイデアと形にしていくための「役割越え」の動きがある。
取り組みの広がりに新しいアイデアとアウトサイダー(社外の協力者)の参画がある。
新しいことを確実に実践していくために、新しいやり方も併せて熟成させ続けている。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 169」2020.3.20】