いつも新しい自分たちでお客さまをお迎えするには何が必要なのか⑴ 戦略という言葉②
2021.02.15岡村 衡一郎
変化を日常にする。
いつも新しい自分たちでお客さまをお迎えできることがサービス業の醍醐味、前回では変化を味方につけていくための戦略を活用していくために戦略という言葉と、その使われ方について触れた。
変化を遠ざけてしまう〇〇戦略は、目的が見えにくいタスクの列挙、やらなければならないことのダウンロードになっていると、書かせてもらった。
本稿では変化を味方につけていくための戦略というビジネス用語に、どう意味を持たせ活用していけばいいのかを考えていきたい。
広島県・宮島にある菊乃家の戦略は宮島を盛り上げることである。
当たり前かもしれないが、宮島自体への観光が陰ってくれば自分たちの存在も危うくなってしまう可能性があるのだから、私の定義する戦略「これをやらなかったら会社が傾くこと」に合致する。
そして、どうしたら宮島を盛り上げられるのかに、正しい答えがないところが、さらにいいのだ。
こんなことを書いていくと読めないことを戦略にするのか、という声が聞こえてきそうだ。
実は菊乃家には、ある程度読めるA面戦略と、やってみないと分からないB面の二つの戦略がある。
宮島の我が家になるという戦略はA面である。
これを起点に、おもてなしの見直しや、朝食や夕食、部屋のアメニティ、などなどの改良を行なっている。
部門を超えて知恵を集め、時間軸を切りながら進め、満足度や客単価、リピート率や指名予約の成果指標で効果を確認している。
A面の戦略「宮島の我が家になる」を縦軸で行なうと同時に、B面の戦略を横軸で実践していくのだ。
B戦略は「宮島を盛り上げる」を「第三商店街を歩く人の数」を成果指標に行なっ ている。
ある程度対策が見えるものをA面でしっかりと行ない高めることと並行し、やってみなければ分からない取り組みをB面で行なうハイブリッド型戦略による変化を日常にしているのが菊乃家の特徴だ。
加えて菊乃家の戦略は目的中心である。
何のために自分たちが存在するのかを明らかにして、存在意義を強化していくために戦略が組まれている。
〇〇戦略という言葉を、自分たち都合のものに使い切る企業とは真逆に位置づけられている。
自分たち都合という表現が分かりづらいかもしれないが、顧客リストを〇〇件にする、売り上げを〇〇億にするなどの、顧客にとってはあまり関係がない、それが実現してうれしくはないものを戦略の第一番目に持ってきているケースを指して自分たち都合と表現してい る。
もちろん結果が大切なのは言うもでもない。
しかし、結果を目標にして目標を戦略的に展開しても、変化を味方にしていく方向には動かしがたい。
変化を味方にしていくための、戦略の戦略的な活用は、存在意義や大義を、広く深くしていくための取り組みに力をあわせていけるようになるための二本の旗印化にある。
一本目は、ある程度イメージできて粋に感じて取り組めるもの、二本目は、業界の誉れ、地域の誇りにつながるが、やってみなければ分からないことが中心にあるもの。
変化を日常に位置づけ、いつも新しい自分たちでお客さまをお迎えする。
このための戦略は旗印としての機能である。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 168」2020.3.13】