成長する会社の会議は復習中心
2021.01.19岡村 衡一郎
女性が輝く企業として脚光を浴びるA社は広島県にある。
美容系と女性活躍をサポートする事業を営んでいる創業間もない伸び盛りの会社である。
ここ数年、業績の伸びは二けた成長を続け、創業10年で社員数は300名を超える。
業績の伸びでは、本コラムに好事例として紹介するまでもないだろう。
A社は、とにかく人が育つ。
社長は広島県の団体が選んだ、モストイクメンボスとして表彰された(モストイクメンボスとは、社員の育成手法が素晴らしいトップに送られる表彰制度だそうだ)。
加えてA社は、SCGSが掲げる目標の一つ、業績も働きがいのあるモデル企業と言えるだろう。
私は、A社の店長会議に参加させていただいて育成手法の素晴らしさを実感した。
会議では復習の時間を長く取っているのが特徴的だった。
ここ1カ月で分かったこと、学んだことを話し合い、会議の半分くらいの時間をあてているのだ。
そして次月の予算確認などは、確認程度にとどめて、今月のトピックとして、身に付けて欲しい考え方などをトップ自らレクチャーをする。
店長会議の多くは、予算とのギャップを確認して対策を発表させるか、トップの話を一方的に聞くか、業績優秀者の事例を聞くなどの、双方向ではないものがほとんどだ。
効率を重視してアジェンダをこなしていくか、店長の甘さを指摘して、直させたいのか。
とにかく、意味ある会議と言えるのは、少ないものだ。
社員は、さぼるということを前提に、締め上げるために行なっている会社すら、まだある。
SCGSが掲げる業績も働きがいもというスタンスからは、程遠い。
A社の店長会議は、参加する度に賢くなる。
自分の考えが整理されるのはもちろんだが、人の学びを自分のものにできる会議になっているのがすごいところだ。
店長のBさんは「うちの会議は復習の場です」と会議の特徴を私に説明してくれたが、まさにその通りに運営されている。
人の成長は、一つはインプット、一つはアウトプット、もう一つはフィードバックという、三つのサイクルに支えられる。
A社の会議では、この三つが質よく回るための原動力になっているのだ。
特にフィードバックからインプットの流れがすごい。
会議の立ち上がりは、ここ1カ月で分かったこと、学んだことから入る。
自分自身の行動のセルフフィードバックからはじまる。
店長のBさんが言う復習を重要視しているのだ。
一人一人のセルフフィードバック情報は、全店長のインプット情報に変わる。
自分一人では気づけなかった学びが他者のセルフフィードバックから得られるのだ。
店長は、自分の復習とほかの店長の復習を新しい情報として得ることで、自分の行動を変えていくためのヒントを得て帰れる。
行動を変えるための情報、自分が成長していくために違いを作るためのヒントが、万全の会議なのである。
モストイクメンボスに選ばれた社長は、プロのスポーツ選手を目指していた。
そこでの学びは、上達の秘訣は、復習にあるということであった。
A社店長の成長は、復習で自分を知り、可能性をひらく新しい知識を得て、実践に移るという、社長がプロスポーツ選手を目指し身に付けたサイクルが根底に回っている。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 163」2020.2.14】