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COLUMN

いい会社づくり通信

次々にサービスを生み出せる考える現場

2021.01.26岡村 衡一郎

 先日、新設のホテルに宿泊した。
チェックアウトのときに「おはようございます」と明るい声掛けの後に電話が鳴った。
3人のフロントスタッフは、目の前のチェックアウトに来た人がいないかのように、一斉に下を向き電話に出る。
なぜ目の前のお客よりも電話なのか、しかも3人で。
私は、どの人にチェックアウトをお願いすればいいのか、と迷いながら、一斉に電話に出る行為に違和感を持った。

 ホテルが増えた分、サービスの質が下がっていくのだろうか。
「本日で20回目の宿泊になります、以降の宿泊には新聞が無料でつきます」。
とあるホテルで言われた一言に、うれしさを感じなかったのは気のせいだろうか。
月の半分はホテルに泊まることが多いから、そんなことも考えるのだが、それを理由にしていては前に進まない。
あるのは、考える現場があるか、そうではないかだけだろう。

 本コラムで度々取り上げさせていただいている菊乃家の松本支配人からうれしい連絡が入った。
菊乃家は宮島を盛り上げられる存在を目指して創意工夫を凝らしている旅館だ。
スタッフの皆さんは、宮島観光の活性化のためのアイデアを日々話し合いながら実行に移している。
現場からの発案で「幸せの白タヌキ見つけナイトウォーク」(写真:菊乃家HPより)を始めるというメー ルである。
メールには次のようなエピソードが書かれていた。

 このアイデアも、オフサイトミーティングを通じて、出てまいりました。
昨年の秋、Aさんが、例の「鹿ルーム」を盛んにオフサイトで語っていたのですが、鹿は宮島で当たり前で、インパクトに欠け、お客さまから反応が薄いと思われました。

 そうすると、Bさんが 「鹿よりも、白タヌキはどう? ホテルの前に出没することが多く、ほかの場所では見つけることができにくいので、菊乃家の一品になるのでは?」とのアイデアを出してくれました。
それから、ダーッと皆が意見を言ってくれました。
「見つけたら、オリジナルグッズをプレゼントしては?」
「携帯で、画像を撮ってもらいましょうよ。そして、タグ付けしてくださった方には、さらに、別のプレゼントを差し上げるとか…」

 AさんのアイデアをもとにBさんが膨らませ、膨らませアイデアをさらにCさんDさんが肉付けしていく。
菊乃家には、お客さまに向けて宮島ならではの魅力や楽しみを伝えるために自分たちは何ができるのかを皆が考える。
もっと良くしていこうとする、考える現場があるから、何回行っても新しさが加わっていく。
そして何より、自分たちがマンネリしていくこともなく、お客さまは自分たちを選んでくれたことを本当に喜べるのだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 164」2020.2.21】