03-5420-6251

ご相談窓口/9:30〜18:00

COLUMN

いい会社づくり通信

旅館・菊乃家は変化し続ける

2020.09.28岡村 衡一郎

 旅館・菊乃家の取り組みを数回にわたり紹介している。
前回は、オフサイトミーティングで話し合って決めた夏制服についてふれた。
夏の制服の背中に大きくプリントした「ようこそ宮島のわが家へ」は顧客に対するメインメッセージであった。

 彼らが目指しているものは日々発展している。
現在は、自分たちの旅館をよくすることだけが目的ではない。
宿泊単価、稼働率、リピート率。
これらの成果指標に加えて「目の前の商店街を歩く人が増えたか」を成果のモノサシに加え商店街の活性化策までをレンジに入れている。
宮島を活性化させることができる存在を目指して「菊乃屋アクティビティ―」という一品を観光の目玉にするべく取り組みを始めている。

 目の前の商店街を歩く人。
なんで、と思われる方も多いと思う。
菊乃家は、宮島のフェリー乗り場からメインの商店街を抜けたはるか先、二つの商店街を通り抜けた先にある。
当然フェリー乗り場から離れるにつれ商店街を歩く人は減ってくる。
歩く人の数は メインの商店街と比較して少ないが、一つ一つのお店の魅力は決して負けていない。
彼らは「菊乃屋アクティビティ―」が目玉になることで、宮島の隅々まで散策する人を増やしていくことを意図しているのだ。

 宿泊単価、稼働率、リピート率。
これらの目標だけなく、周りの人たちを含め、全員の幸せを追求しようとしていくスタンスは、組織にノリをもたらす。
誰かのために、何かのために、協力して頑張れる環境は、サービス業で働く人たちにとって、この上ない環境になるのだろう。
支配人の松本さんからのメールに、そんな姿が垣間見られる。

「岡村さんお世話になります。今日は、夏の忙しい時期を終えましたので、久し振りに社内でオフサイトミーティングを実施しました。
昨年1年間、ご指導いただいたおかげで、スタッフも随分慣れて来まして、どんどんアイデアが出てきました。
テーマは、正に「イノベーション」。
会社を変えて行くアイデアを事前にポストイットに書いてもらい、3時間掛けて、皆でディスカッションを行なった次第です。
クレドの活用方法、館内断捨離、お客さまへのアンケートの見直し、職場長による月1回の面談、役職の立候補制度導入などなど、私たち幹部のミーティングでは思いも付かないアイデアが、たくさん出てまいりました。
これからまとめるのが大変です。
社内が変わる予感がしております。
それでは詳しくはまた後日にて」

 メールにある最後の一文「社内が変わる予感がしております」から、松本支配人の初心を、今、100%で実践している。
ホテルチェーンに勤めていたころに、新しいサービスに即賛同を得られない中でも戦ってきた経験が今花ひらいている、と私は感じた。
マニュアルを守れ、客をさばけ、言った通りにやってくれ。
観光業が右肩上がりのときに、画一化された施設の横展開が、まかり通っていたのだろう。

 インバウンド需要もあり観光客が増えているのは望ましいことである。
しかし本当の成果は、もう一回来たいと思える旅になったかどうかにある。
旅館・菊乃家の「菊乃家アクティビティー」は、真の成果に向かった全員参画の取り組みであり社内が変わる予 感の原動力である。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 150」2019.10.11】