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COLUMN

いい会社づくり通信

全員活躍職場の源泉

2020.08.24岡村 衡一郎

 目指すものを変えれば職場が変わる。
広島県の宮島にある旅館・菊乃家は、目指すものを変えて、スタッフのワクワクを倍増させている手本と言えるだろう。
彼らは、客数や客単価稼働率を追い求めない。
目標とするものは、会社の内側にある業績指標ではない。
旅館の外側で起こる変化に焦点をあてている。

 彼らの現在の目標は、目と鼻に先にある商店街を歩く人が増えることである。
菊乃家が宿泊される方々以外にとっての魅力を提供できるようになれれば、商店街を歩いてくる人が増えるはずだ。
今ある商店の良い所を私たちが一緒になって伸ばせる存在になれれば、宮島内で人が集まっている商店街に負けないくらいのものになる。
菊乃家は、外側で起こる変化をモノサシにしている。

 売り上げ、客数、客単価や稼働率。
これらの指標は、追えるようで、追うことに意味を持てなければ、自分たち本位の、お客さま不在の成果指標になりかねない。
自分たちが真の意味で仕事ができたのか、そうでないのかを測る第三のモノサシ。
自分たちの外側にある貢献にフラグが立てられるものを持つことは、仕事そのものを変えていくことにつながっていくのだ。

 第三のモノサシは、菊乃家のお客さまの概念が変えた。
提供価値にも広がりみせている。
旅館・菊乃家にとってのお客さまは、宮島を訪れる人すべてだ、
宮島を訪れた人に、短時間のふれあいでも喜ぶことをやろうと、数々のソフト中心のサービス開発を、全員参加で行なっている、本誌でも紹介させていただいた抹茶教室や書道教室、けん玉大会、縁日など、社員が出したアイデアを、次々と形にして、菊乃家の宿泊客以外にも提供している。

 玄関横にひっそりと創業当時につくった足湯がある。
誰でも使うことができるだろうと考えてつくったものであった。
早めに着いた宿泊客が楽しむ程度のものだった。
宮島に訪れた方、全員を考える彼らにとって、足湯を6カ月前のものとは全く別物のように活用できている。
休憩に訪れる人にドリンクを提供する際に話しかけたり、抹茶教室の前後に使ってもらったり、お客さまを楽しませるためのソフトのように使いこなしている。

 商店街の活性化という自分たちの外側の変化を追う仕事は、全員が活躍できる職場づくりの源泉になっている。
書道教室の先生は、清掃担当の方が担う。
通訳をともなう会の司会は、フロントの若手社員が行なっている。
抹茶教室の先生は、フロントの台湾からきたスタッフが、現業の合間を縫って行なっている。
支配人の松本さんは、商店主一人一人の売りを見つけては協働で、すし教室や、着物のお話し会などの企画をつくって、宮島に訪れる人にPRしている。

 人は自分に割り当てられた作業を仕事であると誤解しがちだ。
フロント、料飲、客室、守らなければいけない仕事はたくさんあるが、この中に人を押し込めてしまっては、活躍職場は永遠につくれない。
内側にある指標を追い求める行為が仕事を作業に化けさせてしまうのかもしれない。

 外側に起こそうとする変化を測る。
第三のモノサシを持つ有効性を旅館・菊乃家は示している。
菊乃家がある宮島に行こう。
この流れをつくりだすワクワク感が人を作業から解放するのだ。

HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 145」2019.9.6】