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COLUMN

いい会社づくり通信

どれもおすすめしたい気持ちをぐっとがまん

2020.02.10岡村 衡一郎

人気のロールケーキで、1日に1000人以上のお客さまから支持されるお店に(3/3)

「あなたの会社の財産は何ですか」と尋ねられて、即答できる人は少数派です。
「お菓子の家スワン」店主の石川浩さんも、まさにその一人でした。
石川さんが自社の財産を探し当て、『会社に眠る財産を掘り起こせ!』に掲載している、繁盛店への道を切り開いていったプロセスを3回に分けて紹介。
今回は第3回です。

 答えはすでに出ていたと言っていい状態でした。
石川さんの技能が集約したロールケーキは、スポンジのうまさがダイレクトに伝わります、自家消費にも手みやげにも向いています。

 すべての線が「ロールケーキ」へとつながっているように思えます。
しかし、店主の石川さんに「スポンジのうまさが最も生かされる一品は何ですか」と話を向けても「そりゃあ、全部ですよ。スポンジは土台ですから」と、話がかみ合わなかった思い出があります。

 石川さんが「ロールケーキが自身の財産が凝縮した商品だ」と納得できたのは、商店街の年間集客数との連関でした。
商店街組織で集計していたものを真弓さんが探してきてくれました。
見てみると商店街の減少とロールケーキの売り上げは、無関係であると分かります。

 ロールケーキは、人を引き寄せる力がありました。
お客さまは、 ロールケーキがおいしいことを知っていて、買い求めるために来店します。
「ロールケーキがカギになる」。
ようやく納得してくれた石川さんですが、一つの商品にフォーカスするためらいはなくなりません。
しかし「どれもおすすめ」では、お客さまにとって、どれもおすすめではなくなってしまいます。
この理解が腹に落ちるのは、やってみて本当にお客さまが増えるまでは難しいものです。

 石川さんを真弓さんがリードする形で、とにかくロールケーキを前面に押し出していきました。
商品を改良した上で、抹茶やチョコ味のバリエーションをそろえ、価格を価値に見合った800円に設定しました。
商品名は「スワンのロールケーキ」とし、商品づくりに込めたメッセージを添えた手づくりのポップやチラシを制作しました。

 ロールケーキを「一品」に育て上げるために、売ると決めた分だけ商品をつくりました。
ガラスケースいっぱいに陳列。ロールケーキを前面に打ち出したチラシも新聞などに入れました。
「なぜ おいしいのか」の理由を接客するときに説明。
今までの2倍、3倍とつくった分を若手スタッフも巻き込みながら見事に完売。
製造数を増やし、当初の5倍、10倍と売り上げは増えていきました。

 お客さまが思い出してくれるような商品があることで、店まで足を運んでくれる。
何度かリピートして食べているうちに、ほかの商品が気になる。
試しに買ってみたら、「これもおいしい」となり、次の商品へと波及していきます。

 あれから18年がたちました。たお菓子の家スワンは、閑古鳥が鳴いていた商店街にありながら1日に1000人以上のお客さまが訪れる人気店になりました。
遠方からのお客さまも増えました。
書き入れ時には1日に3000人のお客さまでにぎわう日も。
従業員は10人となり、かつて休日もなかった真弓さんが休みをとれるようになりました。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 119」2019.2.1】