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COLUMN

いい会社づくり通信

~パークホテル東京の快進撃 4/5 客室の壁に直接描こう、そして、自分たちで売ろう

2020.01.07岡村 衡一郎

 思いを巡らしているうちに、日本の美意識を体感するための突破口は、今まで取り組んできたことの再活用にありそうだというところまでは分かってきました。
しかし、好評の展示会の回数を3倍にすれば、費用も手間も3倍かかります。
それに、単にイベントだけがうまくいけばいいのではなく、宿泊客増という最優先の課題解決に結びつける必要があります。

 私はプロジェクトメンバーたちの話を聞きながら、頭の中で、「墨汁で描いた絵画」を思い浮かべ、それを100倍くらい大きくしてみたらどうなるのか、1/10に小さくするとどうなるのかなどと、いろいろな妄想を膨らませていました。

 そうこうしているうちに、「アート作品の中に、自分がいたら楽しいかもしれない」という感覚がわいてきます。
そこに、みんなの意見が重なり、「ホテルに泊まれば客室にいる時間が一番長いのだから、客室に個性があれば、お客さまもわくわくできるはず」と話が展開。
「客室の壁に直接、アートを描いてはみてはどうだろうか」と、アーティストルームのアイデアのもとが生まれた瞬間で した。

 これはいけるかもしれない。
プロジェクトメンバーの中で、このアイデアを否定する人は誰一人いませんでした。

 しかし、設備担当者からはクレームが出ました。
客室は同じものの方がメンテナンスには好都合なのです。
マーケティンググルー プも話に全然のってきません。
特殊な部屋を1部屋だけつくって売るのはシステム上至難の技だというのが、反対の理由でした。
確かに、客室は多くの旅行代理店を通して世界中で販売されているため、ダブルブッキングにでもなれば、クレームになりかねません。

 マイナス面を考えたら、不安材料は出てきます。
しかし、答えは足元にあるものです。
かつて、化粧品メーカーと組んだコラボルームが、高単価だったにもかかわらず、即完売したという実績がありました。
期間限定で、化粧品をどれだけ使ってもいいことを売りにした部屋でした。
部屋に何らかの価値を加えたらよく売れたという事実が、パークホテル東京の中にはすでにあったのです。

 宿泊グループのリーダーの小野さんは、お客さまが喜ぶことにとても敏感な人です。
壁面にアートを施した面白い部屋は「外国人客にウケるかもしれない」という直感がありました。
そして、「安売りなしで、現状を立て直す対策を考えてほしい。
決めたことは、原則応援します」という社長の言葉を思い出します。

 社長に直接かけあい、後押しをもらった小野さんが、アーティストルー ムのアイデアを前に進めていきました。
結果、社内の反対を押し切って「アーティストルーム」の第1号を完成にこぎつけます。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 115」2018.12.21】