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COLUMN

いい会社づくり通信

頼る、ほめる、期待する、部下の成長を促す社長のアプローチ

2019.09.30岡村 衡一郎

 部下を頼る、部下を心からほめる、本当の意味で部下に期待する。
山中社長と社員のかかわりは自然体だ。
上から見下ろす、下から見上げられることはない。
山中社長は2社の経営をⅤ字回復させ、現在、中堅メーカーの活性化に取り組んでいる。
2社のⅤ字回復はリストラなし、大型設備投資を成し遂げた。
山中流経営は社員のポテンシャルを引き出すのだ。

 山中社長の部下を頼る姿に裏はない。
世界一を目指すためのパートナーとして社員をあてにする。
部下をほめる姿にウソがない。
先月より成長した部下の姿に感動するからだ。
部下への期待に愛がある。
誰かのために仕事をしたときに人は花ひらくと知っているからだ。
経営がよくなる、人が成長する、自分が疲れない。
これら3点の重なりを考え抜いた上で結論が、部下とのかかわり三カ条(頼る、ほめる、期待する)だ。

 聞くところによると、昔は、怒って、怒鳴って、指導をしていた時期があるという。
家に帰っても、しこりが残って眠れなくなる日もあったようだ。
これは自分の体にもよくない。
部下のためにもよくない。
何より現場がよくならない。
怒った瞬間から3日間くらいしか効果が続かない現場を見たときに部下へのアプローチを考え直しはじめた。
自分がコントロールして仕事を進めていったのでは三日坊主で終わるのだ。

 相手ができない理由をいくら責めても何も変わらない。
自分が解決しても元に戻る。
問題なのは、人ではなく生産性が上がらないこと。
人ではなく問題を攻めよう。
相手目線で考えれば、できない状況を一緒に変えられる人がほしいに違いない。
相手の目から見える景色、相手の頭の中にあるできない理由を想像できるようになると、自分が頭にくることは少なくなった。

 自分ができていなかったのは、「そう思ってしまうよなあ」という受容だった。
山中社長は、受容なしで、ああしろといきなり操作に入ってしまっていたことを反省した。
受容してから答えをつくる造形へ。
相手のしょうもなさを分かって、分かち合ってから、どうするのかを一緒に答えをだしていくアプローチが不足していた。

 三カ条は、昨日より今日、今日より明日、その人が少しでも前に出てもらえるアプローチである。
頼る内容を明確に伝えることで、相手との目線はあっていく。
期待することで、経営として求める成果と仕事の成果はあっていく。
ほめることで、自分が相手の変化を見過ごさない洞察力が高まっていく。

 山中社長が大切にしているのは、目の前の問題に対処していくことではない。
世界一を目指すという経営の方向を共有して、自ら考え、現状をよりよく変えていく社員の出現である。
自分が目指しているものを妥協なく伝えていけないと、頼る、ほめるは、お世辞に、期待は精神論になってしまう。
山中社長が大切にしている三カ条は、自分と部下の間で、自分の変わり続けるために大切にしている具体策である。

 部下の成長を促すアプローチは、山中社長の成長に必然性を持たせるアクションに変わるのである。
山中社長の、部下を頼る、ほめる、期待する、実践にウソはない。
相手との真剣勝負になるからだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 103」2018.9.21】