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COLUMN

いい会社づくり通信

再び繁盛させる社長の働き

2019.05.13岡村 衡一郎

 複数企業の立て直しを成功させてきた東海社長の口グセに、ヒトと企業の生まれ変わりを促進する原理・原則がある。
彼が、新社長として赴任した企業では、指示待ち族に見えていた社員が、6カ月後に創意工夫が好きな社員に変わる。
そして 1 年もたてば、変えるのが普通の感覚で変えるところが見つからないことに気持ち悪さを感じ始める。
仕事の中心を変化が占めるようなるのだ。

 東海社長は折に触れ「昨日と何を変えましたか」と社員に働きかける。
社員の仕事をじっくりと観察しては「何を工夫したの」と質問を投げかける。
時に、何をどうすればいいのか、改善のネタを、なかなか見つけられない社員もいる。
そんなときは、ヒントを出して一緒に考える。
指示命令を出すのは東海社長にとって簡単なことだが、成果は社員が答えを出せた量でしかない。
仕事の質は変わらない。
だからこそ相手が気づけるように支援に入るし、変えたところは徹底してほめる。

 ほめ言葉は「かんどうだね」、「みごとだね」、「さすがだね」、「まねしたいね」、「なかなかできないことだね」、「いちばんだね」、「すばらしいね」の頭の一文字をとって、か・み・さ・ま・な・い・す、を繰り返す。
同時に次はどうするのと、ここを変えるのはどうか、と社員と改良箇所の発見のミニコンテストを随時、1日、1 時間以上の現場まわりの中で行なう。

 言うまでもないが、変えることを習慣にするのは、守ることを促すよりはるかに難しい。
会社が敷いたルールや仕組みを守らせて過不足なき運営を求める。
運営者のスキルアップなら手足を指導していけば事足りる。
変える習慣は当然ながら手足の指導では身に付かない、よりよくするための知恵を出し続けられる技能を育てなければならない。

 東海流のリーダーシップは、社員の手足へのアプローチではなく、思考、着想、などを含めて全人格的にかかわる。
東海流経営の一丁目一番地「昨日と何を変えましたか」を全員で実践していくために、次の三つを全社員に合わせて問うている。
一つ目は、情報は共有されているか。
二つ目は、社員は生かされているか。
三つ目は、世界一を狙っているか。
というのは、情報が足りなければ知恵は生まれない。
変えることで人が犠牲になってはならない。
世界一を目指すのが成長の秘訣だと考えているからだ。

「昨日と何を変えましたか」「情報は共有させているか」「人は生かされているか」「世界一を狙っているか」「か・み・さ・ま・な・い・す」
東海社長の口グセは、多くの社員の仕事観を変え、お客さまへの提供価値を飛躍させる。
こなすのは作業で、よりよくするのが仕事であること。
妥協的な目標設定ではなく、世界一を狙ったチャレンジを含んだ目標を設定すること。
仕事は自分のためではなく誰かのためであること。
これらを通じ、6カ月前まで不満しか言わなかった人も仕事と遊びが一体になるようなワクワク感が持てるようになる。

 何を変えれば、お客さまは喜ぶのか、この一点へ。
変えることを楽しめるようなった社員は、誰かのために仕事をすることを心底、楽しみ、業界内納期最速などの顧客価値の飛躍をもたらす。
東海社長の口グセにヒトと企業の生まれ変わりの原理・原則がある。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 085」2018.4.20】