本部と現場を一体にする対話型セミナー
2019.02.19岡村 衡一郎
日本でトップクラスの店舗数を持つベーカリーチェーン・リトルマーメイドは、本部も店も一つの方向を向いて取り組みを行なえる仕掛けを毎年深化させている。
一体になって進め、精神論の範疇で終わらせずに具体的に落とし込んだやり方をブラッシュアップさせ続けている。
複数の現場を持つチェーン企業は、本部がコントロール機能を持つのが一般的だが、リトルマーメイド本部はこの形態を採用していない。
創業以来、加盟店のオーナーとの関係を大切にしている本部は、店舗管理ではなく支援するという役割を重視しているからだ。
リトルマーメイド本部の強みは、「一店、一店」という異なった存在に目を向け支援していることだが、長所の裏返しとして、各店への個別対応による業務の複雑さや業務量の多さを回避する仕掛けが必要であった。
もともとの強みを伸ばし、煩雑な業務をシンプルなものにするための施策が、本部スタッフも店舗もメンバーも一堂に会して行なった対話型のセミナーだ。
セミナーには、加盟店の店長、店舗スタッフ、本部のスーパーバイザー、接客指導、製造指導の担当者が参加する。
そして、各店の売りとなる商品を作るための対策や、お客さまの対応を改善するための対策を立てていく。
担当のスーパーバイザーだけでないのが、セミナーの特徴だ。
一つの場に集まり、同じ方向に向かって作戦をたてるという行為は、一店、一店の状況に対応しながらも、効率的に進めていくことを可能にしている。
各店の課題を根っこでとらえていくことで、打ち手は集約され、担当者だけではない、より多くの人の知恵が生かせるから、短時間で最良のアウトプットが出せるからだ。
売る人、作る人、支える人が有機的に交わり、一緒に考えて決めた一店一店の作戦は、自分たちのものだからこそ、実行に移していこうとするエネルギーが高まる。
本部の対策が上滑りすることもない。
リトルマーメイド本部は、現場と本部が一体になり、お客さまからの要望を見過ごさずに応えていける具体策を熟成させている。
「同じ方向を向き、持ち場を超えて、一緒に作戦を立てる」という創業以来の本質的なところは生かしつつ、地域や加盟店の課題に根っこに即した形のセミナー展開は、複数のバリエーションを持つまで広がってい
る。
例えば、後継者のための店長勉強会、品質第一研修会、店舗クリニック(診断結果をもとに改善策を共に考える場)や合同店長会議などだ。
リトルマーメイド本部にとって、作る人、売る人の垣根を越えて集まる仕掛けは、変革の媒介である。
集まることでお客さまからのリクエストをリアルに感じ、応えることで自分たちが変革するための材料の発見に欠かせない場になっている。
本部と現場の垣根を越えて一致団結して協力して進めていこうをスローガンにしてはいけない。
一現場一現場に応えていくのは手間がかかるものというのは、実は思い込みかもしれない。
団結を自分たちの変革を促進するための具体策に落とし込めれば、お客さまの要望に一体になる本部と現場に関係ができあがるからだ。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 074」2018.1.26】