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COLUMN

いい会社づくり通信

上級レベルの現状把握

2019.02.25岡村 衡一郎

 現状把握。この言葉は、ビジネス用語として知らない人はいないだろう。
目標を定める前の工程として、ほぼ全員が取り組んでいると思う。
現状をつかんで、目指すものとのギャップを明らかにして手を打つアクションは、やっているか、いないかで二分すれば、やっているに入る。
しかし、知っている言葉ほど、掘り下げることは少なく、人によって深さが異なると実感した。
世界一の値を出すエンジニアの現状把握は、全く別物だった。

 彼にとって現状把握は、世界中の競合メーカーを知ることからはじまる。
全メーカー、全エリアのスペックを細かく、細かく見ていく。続いて自社の過去の取り組みと先達の偉業を、図面をひもとき調べていく。
そして、畑違いのエンジニアが発表した論文の、参考になりそうなものには目を通していく。
他社比較、自社に積み上げられてきた技術、世界トップクラスのエンジニアリング技法。
これらすべてをつかむ一連の作業が、現状把握だというのだから舌を巻く。

 10 人中何人が、このような、つかみをしているだろう。
近隣の他社は調べるが、地域が離れたら分からない。
先達の取り組みをひもとこうとしても、昔の取り組みを記載したものがない。
異業種のことなど、趣味以外、ほとんど調べたことがない。
このような人の方が多いのではないだろうか。

 私も彼の現状把握の作法を見て反省させられることが多かった。
徹底した他社比較なしにターゲットは定まらない。
先達の取り組みをひもとかずしてアイデアの原型は生まれない。
異業種のアイデアがなければ、細部に至る構造は詰められない。
なるほど、彼の取り組みは理にかなっている。

 ホテルなら稼働率や売り上げ、営業なら売り上げや単価。
これらの結果系の目標である。
よくよく考えてみれば、何をしたらいいのか、明らかにされてはいないままの、管理指標にすぎないのだ。

 彼の仕事は、世界一のパーツを設計し、組み上げていくことだ。
だからこそ、何をどうすれば、そこにたどり着けるのかを絶えず考え抜いている。
世界一という結果に向かって、やることを見つけるアクションが黒帯レベルの現状把握なのだ。

 どの仕事にも段階があるし、レベルがある。
お客さまの出迎えも、目標設定も。やっている、やってない、二元論では深まらない。
絶えず質を振り返り、同僚と上司と部下と高めていきたいものだ。
表1に現状把握のレベルを初級から上級までまとめてみた。互いの仕事を生産的にしていくための材料に使っていただければ幸いだ。

075_表1

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 075」2018.2.2】