人を責めずに仕事を攻める
2018.12.04岡村 衡一郎
あるミドルリーダーの変化を書きたいと思う。
彼の変化を通じて、真摯さと人を責めずに仕事を攻めるというリーダーシップの原則を感じたからである。
彼は 2 年前に長年赤字の部署をまかされた。
そして試行錯誤の上、黒字化を成し遂げた。
数年前は周りに気を使ったり、人を責めたりしていた野本さん。
今は何事も背中で見せて、周りのために一番に最初に動く人になった。
背中を見せるということからは、強いリーダーシップをイメージされるかもしれない。
野本さんはタンタンとしている。
作業がいかに楽に早くできるか。
そのために自分は何をすればいいのかをいつも見ている。
最初に手掛けた棚の高さ変更だ。
既製の高さでは毎日出し入れするのに適した高さではなかった。
ちょうど手を伸ばしたところに対象物がくるようにと高さを変えてみた。
棚の変更というアクションは、自分より社歴の長いパートさんへのアプローチのし方が分かった瞬間でもあった。
以前は会議を開いて数値目標を話してみたり、個別に時間を割いて作業状態のフィードバックをしてみたりと努力を続けていた。
しかし、これらのアクションは、相手にどうなってほしいかに寄っていて、自分がどうするのかが抜けていた。
相手にやってほしいことを明確にしていくだけでは精神論になりやすい。
頑張ってくれというメッセージしか相手には残らない。
自分なりに頑張っていない人の方が少ないから、何か新しい取り組みに発展はしていかない。
会社の目標は、短い時間で効率的にモノをそろえて送り出すこと。
ここを相手だけに求めても難しい。
野本さんは会社の目標に、どうすれば全体として近づけるのかを考え抜いた。
作業が楽に効率的になるアイデアを自分が出してやってみる。
ここを出発点に棚を動かし、すぐにとりやすくなる道具を作った。
野本さんの実践は、パートさんを責めるのではなく仕事を攻める。
リーダーシップの質的転換をもたらした。
仕事を攻めるという姿勢は、徐々に周りを変えていった。
自分たちの作業をより早く楽にするためのアイデアが、各人から出始める起点をつくった。
作業台車が下段の商品にぶつかってしまう問題を回避するためのアイデアだ。
以前なら、ぶつけないように気を付けましょうが結論であっただろうし、ぶつけてしまう人を責めるような雰囲気になっていただろう。
仕事を攻めるという姿勢で臨んでいるからこそ、なくしてしまうかもしれないのでモノを置かない、というアイデアがパート社員さんから生まれてくる。
野本さんは、熱く夢を語る訳でも、叱咤激励をする人でもない。
だが、彼は目標に真摯に取り組む。
皆で、作業効率を上げる手本をつくり、皆のアイデアをすぐに形にしながら、全体に広げるリーダーシップを発揮する。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 064」2017.11.3】