自ら考え動かす習慣をつくる学習する会議
2018.10.22岡村 衡一郎
「自分たちの仕事は自分でよくする」。
当たり前のように思える仕事観の醸成が、昔よりも必要になってきている。
「教えてもらっていないので、やっていません」。
この言葉に近いニュアンスを若手社員から聞いたことがないだろうか。
塾にいくのが普通、アルバイトはマニュアル通りに。
システムが整った環境で育った若手社員の大半は、仕事の前提を動かし変えるのが苦手だ。
システムに乗る姿勢を変えるため、メンター制度や、座学、外部研修に参加させたりとさまざまな取り組みをしている。だが、自分たちの仕事は自分たちがよくする。
この仕事観が真ん中になければ、せっかくの研修が実務に生きてこないし、先輩のアドバイスも生かされないままになってしまう。
自由にやってきた新人類世代。
50 代の仕事に対する姿勢が現れる一言は、「教わらずとも自分がやってきた」。
部活もアルバイトも仕事も、ゼロから形をつくりあげてきた故の自信がある。
先輩社員から若手を見れば不思議なことが多いだろう。
だが世代観の押しつけでは、若手成長のバックアップにはならないだろう。
A 社の若手店長たちが店舗戦略を考え実行に移すことで、昨年比 10%以上の実績を出し続けている。
背景にハイブリッド型の成長支援の仕掛けがある。
「自分たちの仕事は自分でよくする」。
この仕事への向かい方になってもらうためにバックアップを二方向から支援しているのだ。
ポイントの一つは、全員が集まって、一人一人の仕事の質を高めるために何ができるかを考える学習中心の会議。
教えるでもない、教わるでもない、自分が答えをつくるための場を複数展開している。
もう一つは、分からないことがあれば、すぐにアクセスできるマニュアルの整備だ。
教材があれば、作業の習得は早い。
若手社員の特性を生かすためにマニュアルの整備を手厚く取り組み、検索で即疑問が解消する仕組みを充実させている。
質の高い学校のような雰囲気が「学習する会議」にある。
そこには、「教えてもらっていないので、やっていません」。
という姿勢はないし「とにかくやればいい」。
先輩社員からの押し付けもない。
参加する度に視野が広がり、よい事例が見つかり、自分の仕事に取り入れられる知恵が循環する場になるように先輩
社員がバックアップしているからだ。
会議の前半は全社的トピックやお客さまの声の共有で視野を広げられるように。
中盤はモデル事例をロールプレイングで腹落ちするまで練習し、後半はメンバーの知恵をかりながら課題を設定する時間を長めにとる。
最後には、今日会議に来る前の自分と会議を経て分かったこと、実践することを、全員で共有するようにしている。
自ら考え動かす習慣づくりのサポートは十分だろうか。
以前は環境が整っていないことが仕事の学校だった。
今はそれに置き換わる何かが必要だ。
A 社が展開する学習する会議は、20 代のみんなが考えていることを知りたいという欲求を受けながら、それぞれに違った答えにつなげている。
世代の特性を受容しながら甘んじず造形につなげている好事例だ。
世代観を押し付けたくなるのをぐっと堪えて若手が伸びる仕事の学校をつくろう。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 058」2017.9.15】