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COLUMN

いい会社づくり通信

処遇面の改善だけでは、人は集まらないし続かない

2018.09.25岡村 衡一郎

 人手不足はホテル業にかかわらず、日本のいたるところで問
題になっている。
人が集まる会社、続く会社の共通項は、初任給や休日の条件のデータ系に表れない指標の高さにある。
一度、辞めた人が戻ってくる確率が高い。身内に入社を勧めたくなるか否かの質問に 8 割を超える人がイエスと答える。
仕事への誇りが背景にあるから高まる雰囲気に人が惹きつけられる。

 A 社では採用と育成は、責任者クラスの全員の仕事だ。
自分が率いる部門を充実させていくために、適任者がいればリクルートをする。
営業会議の半分以上、人の話をしている。
「山田さんが成長してきた」とか「田中さんの課題はここにある」など、自分の直属の部下でなくとも、本人の成長課題を考えてサポートに入る。
直属だとかそうでないとかは関係ないのだ。

 求人は広告だけに頼らない。
自分がこの人だと思える人には、人事部でなくても声をかける。
面接にも立ち会う。採用に多くの人がかかわっているから、求人にかかる時間と費用の感覚も持てるし、入ってきた人を大切に育てていく雰囲気ができあがる。
誘った人が入社試験を受けるのを断れば自分への魅力のなさも痛感するし、すぐに辞めてしまえば単純に悲しい。

 逆に恒常的に人が不足しているところは処遇面を見直す。
続かない理由に手を入れようとはしない。
人が集まりにくい業界があるように思うかもしれないが、A社のような取り組みをしている企業は、サービス業でも、製造業でも、物流業でも、どの業種にもある。
チェーン店のマニュアルがベースになっている所でも、求人コスト、定着率は倍以上違ってくる。

 B 社物流部門の求人広告。
B 社周辺は工場が多く、人が集まりにくいエリアとされているが、ここ数年、採用コストを下げ定着率を上げている。
ポイントは次の四つだ。
①働きやすさを本当に追求している。
子供に熱がでたら当日でも心おきなく連絡できる。
②改善活動に参加し仕事をつくっていける。
③懇親会などのコミュニケーション活動に手を抜かない。
④職場リーダーが自分たちの仕事を絶えず見直して、よりよいものに追求している実践だ。

 チラシの写真に仕事への誇りを持った人だから出せる笑顔が映っている。
与えられたマニュアル通りに仕事をしていたころには出せなかった表情である。
表情が出せないから、求人広告が無機質な条件の羅列になっていた時期もある。
今は違う。
自分たちの職場に来てほしいと言い切れる。
仕事をよくすることに参画してくれる人を自信を持って募集しているから、反応する人が増えた。

 人手不足の解消には、外在的条件の見直しも大切だが、仕事と人の関係の再構築が必要なのだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 054」2017.8.18】