経営に生かせるもの「両親からの学び」 「原体験」「兄弟構成」
2018.09.18岡村 衡一郎
経営に生かせるものは、MBA 的な方法論だけはない。
人が営む経営は合理的を追求する機械論だけでなく、人のよさを発揮していく、しょうもなさも含めて包み込む、人間論も併せて考えていった方がいいだろう。
あるホテルのA支配人はリーダーシップの取り方を変えた。
先輩のマネを卒業し、自分軸を元にリードするようになってから成果の質が向上している。
三つ子の魂、百までも。
誰にでも生涯続く原点がある。
教科書通りにリーダーシップを取ろうとしても、自分と特性の違う人になろうとしても、続かないから恒常的成果になりにくい。
一人一人の経営の充実は、自分の三つ子の魂に気づき、受け入れ、高めていくのが得策だ。
原点を充足する多少の弱みを補完しながら完璧を目指そうとする実践を軸にしたい。
両親からの学び。
よく思い出すシーンにある原体験。
兄弟の中での役割。
これらの振り返りに自分の三つ子の魂に気づくポイントがある。
A 支配人は、両親から人を喜ばせる大切を学んだ。
特に母から、人のイベントを自分事のように演出し喜ぶ姿勢を横目で見てきた。
彼の三つ子の魂は「人の喜びをつくる」だ。
彼のホテル業界への就職を後押した原点である。
A 支配人は人あたりの良さで社内での評判が高い。
母ゆずりの喜ばせ方がそこに表れるからだ。
しかし、彼にとっては無意識に近いアクションであったと言える。
相手を喜ばせるのが自分の原点と気づいてからは、部下のモチベーションアップに、お客さまを楽しませるイベント企画に、対象が何でも、相手が誰でも、意図的に喜びアップの一点で深くかかわる。
彼のリードする先は、相手の喜びの方向にある、以前のようにドーンと後ろで懐深く構えて待つ姿勢ではない。
細かく、細かく相手にかかわりながら、瞬間に相手の笑顔をひきだす。
前任の支配人とは極にあるスタイルの方が、彼のエネルギーが沸き上がってくるのだ。弟の面倒をみるように、母がお客さまをもてなしていたように、イメージはどんどん沸き上がってくる。
図 1 に示したピラミッドの上に、いまの仕事での役割取りを考えた方がうまくいく。
「コンビニ人間」という小説に、ユニホームを着た瞬間にコンビニ店員という自分ではない別の人格、無機質の機械になる話が描かれている。
自分そのものと、世の中への役割取りが離れてしまっては、仕事での充実感は得られにくいし、仕事の質もある点を境に伸びなくなっていく。
経営に生かせるものは、両親からの学び。
原体験。
兄弟構成。
仕事をはじめるはるか前に身に付いている自分の持ち味。
この一点を地域一、業界一、世界一、に掘り下げる実践が、恒常的に仕事の質を深めていく。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 053」2017.8.4】