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COLUMN

いい会社づくり通信

先輩がマニュアルでサービス革新リードタイムゼロ

2018.07.09岡村 衡一郎

 よきサービスを維持する企業は、マニュアルは最低限の
ものしかない。
「このようにせよ」という作業指示は、そこから飛び出てはいけないという線引きになる。
特に、創意工夫がサービスの質に影響する商売なら飛び出てはいけない枠はじゃまになる。
画一化されたサービスにお客さまは感動するはずもないし、やっている本人たちの仕事はただの作業になり下がる。

 日々サービスが新しくなる現場にあるのはカタではない。
代わりにあるのは「後輩の手本は先輩」という共通の価値観である。
A 先輩、B 先輩、C 先輩と、それぞれの良さを学べるところが、サービス深化の勘所となっている。
先輩同士も学び合えるし、後輩は先輩のいいところを掛け算にして自分の形をつくっていけるからだ。
後輩にとって手本は一つではない。

 手本が一つで以下同文。お出迎えの仕方にフロント対応、注文の取り方を全員同じようにできる。
このような考えは、一昔前の拡大基調の中でもてはやされた。
いらっしゃいませ。ありがとうございました。またお待ちしております。
マーケットが伸びを受け事業を拡大させていく過程で、効率的にある一定のレベルまで仕上げる必要性を感じていたからだろう。

 接客のカタをあえて教えないカーディーラーは、全国トップクラスの CS スコアを絶えず出しているのは、「今日お客さまに何ができるか」互いに問い合う関係があるか
らである。
答えは一人一人違っていい。
車を話題にする人もいれば、息子のことを話題にする人もいる。
趣味の話を持ちかける人も。一人一人のアプローチが違うからこそ、来店客は楽しい。

 車検でカーディーラーに行けば、受付をする人、車をみる人、販売担当の人、店長など、複数の人からサービスを受けることになる。
皆が同じように対応している店に心地よさや感動は生まれるだろうか。
同じなら最低限不快な思いをさせないくらいだ。
当たり前のことなのかもしれないが、サービスの均一性に重きを置いている店が大半なのが実情だ。

 接客が中心にある商売の利点は、思いついたら即変えられる柔軟性。
もっとこうした方が喜びそうだと感じたらアクションを変更できる所に仕事の面白さがある。
面白さを原動力にサービスを深化させていけるところだ。
変化を味方にする企業の改善スピードは、製造業でも24 時間、改善アイデアから具現化までの時間をサービス業はゼロにできる。

 アイデアから実行までタイムラグゼロの仕掛けがカーディーラーの CS ランキング上位を維持させる。
本部の確認待ち時間はなく現場が即アクションに移せる。
背景には、お客さまと後輩と接する瞬間を最良にしようとする視座がある。
「先輩がマニュアル」という紙でないマニュアルは、多様性のあるサービス提供のし方を引き出し、販売台数を伸ばしている。

 お客さまのカーライフに対する欲求把握とサービスの創意工夫は一対の関係にあるサービスを相手に最良な形で届けようとする実践を通じ、お客さまを感じるアンテナは高まっていく。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 043」2017.5.19】