変化を味方につける企業の口癖
2018.05.09岡村 衡一郎
「もっと…」。「…でどこからやろうか」。
これらは、自ら変化を起こしていける企業に共通する口癖だ。
商品開発でも、サービスの現場でも、工場のラインでも、うまくいっているものが、もっとうまくいっている状態を徹底的に考え抜く。
イメージに少しでも近づけるための対策を「どこからやろうか」でしなやかなに行動に移す。
変化創造型企業は、思考と実践のバランスがいい。
近未来のイメージづくりは空を切らない。
既存の商品・サービスや生産ラインを圧縮したもので考えるからである。
例えば、今売れている商品に倍のお客さまからの支持を得るための青写真を考える。
人気のサービスの満足度が倍になっているイメージをつくる。
縮められたリードタイムがさらに半分になる工程のラフスケッチを描く。
好転しているものを倍以上、または、半分以下が思考の出発点にある。
描いたイメージに近づけるかは実際にやってみなければ分からない。
イメージづくりと実現可能性の検討を同時には行なわず、とにかくアイデアを出すのも特徴的だ。
アイデアを実践に移したところで今以上に悪くなることはない。
万が一悪くなったら、元のかたちに戻せばいい。
本来の「ダメモト」の意味に忠実に、構想からアクションへ変換もスムーズに行なわれ、変化への流れによどみはない。
未来の先読みに時間を割いている企業の変化は滞る。
マーケット分析に時間を割いたり、マクロにお客さまの声を集めてみたり、そこに答えがあるようなアプローチをとる。
しかし、100 ページの報告書から見えるものはわずかだ。
経営学者ドラッカーが言う「変化を読むことできない、できるのは自ら変化の先頭に立つことだ」に焦点を合わせたい。
変化の先頭に立つアクションは大きく二つに集約される。
一つは、今あるものを凝縮させ、たどり着く先のイメージづくり。
もう一つは、ダメモトで、アイデアを出し合い、あの手この手で、まずやってみる。
行動の立ち上がりの早さとしなやかさである。
変化には、大胆なひらめきや、想像力が大切との意見もあるが、100 のうち3~ 5のイノベーションの話である。
95%のイノベーションは、今得意としていることを未来への飛躍の足場として生かし切る実践から生まれている。
何もないところからアイデアが生まれている方がまれなのだ。
生かし切るためのアイデアなら多くの人が出しやすい。
過去の否定や弱みの克服に変化をとらえたら難しい。
マーケット分析に偏ったら行先を見失いがちになる。
強みの圧縮、うまくいってきたことを1にとらえ直して、2倍、3倍に膨らんだイメージへの飛躍をあの手この手でやってみるのが変化を味方につけるコツである。
過去の取り組みで行き着けた今の最高を未来への最低地点に変換する。
うまくいっているものを最低地点と考え、もっとうまくいかせたらどうなれるかを考え抜く。
うまくいっている方を徹底的に活用すれば変われるのだ。
「もっと…」。「…でどこからやろうか」。
これらの言葉が飛び交う現場は変化を楽しむ。
強みを使いつくして飛躍を図る実践に失敗はない。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 033」2017.2.24】