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COLUMN

いい会社づくり通信

品ぞろえとはニーズの受け方だ

2018.02.19岡村 衡一郎

 商品・サービスの購入は価値/価値で決まる。
得られる価値に対し妥当な価格と思えるものをお客さまは選択する。
幅広いお客さまから選んでもらえる存在になるには、一人一人異なる欲求をどう受容していけるかにかかっている。
いま一つ客数が伸びない、客単価が上がらないなどの結果は、ある層のお客さまの受容はOKだが他の客層の受け入れの不慣れさによる。

 高グレード中心の品ぞろえは、入門客を軽視している自称専門店に多く見られる。
低グレードの夢や面白味にかけた商品構成でもディスカウント商法だからいいだろうと思っている人は多い。
両者とも、ある特定客層のニーズには合致している。
だが、自分と比較的近い人の欲求に焦点があたり違う客層へ思いを馳せ受容していこうとする取り組みが欠けている。

 地域一番店は、いずれの業種も懐深くお客さまのニーズに応えている。
老若男女、所得の違いを受け入れるための品ぞろえを実践している。
例えばトンカツ一番店は、下限価格を一人前1300円とし上限を3600円にしている。
一食にかけられる予算の制約を加味し、価値に妥協しない商品を市場価格のモノサシで設定。
自分が真に納得するものを上グレードにぶつけている。

 少なくとも下限から上限は3 倍の懐の深さが地域一番店の特徴である。
カメラ一番店はコンパクトデジタルカメラ1万2800円から7万8000円まで約7倍の幅広い品ぞろえを実践している。
自転車一番店は、8800円から6万9800円までの通学用自転車をそろえる。
主観的なフィルターで商品・サービスをそろえるのではなく、求める欲求をすべて受容していこうとするから縦方向に広くなっていく。

 自社の商品・サービスの品ぞろえとは、お客さまのニーズの受け方である。
安い、高いと言った価格や、自分たちの好みを重視する前に、主観を離れ複数のお客さまを理解するためのフィルターを持とう。
顧客セグメントは昔も今も人気がある。
しかし、客層の絞り込みは商売が成り立つのは一部の都会か特定客層へ全国の販売ルート持つ企業にとって有効な手段だ。

 どの車が売れるのかは本当には分からない。
お客さまの反応にトコトン合わせていこうとする思想が、トヨタ自動車を世界一に導いた。
台数が伸びなくとも、なるべく採算が取れる早いムダのないモノづくりが構築できた背景に、それぞれに違うお客さまの反応の深い受容がある。
自動車で異なるお客さまの欲求を一番満たしてきた実践が、繁盛を支えているのだ。

 品ぞろえとはニーズの受け方だ。
うちは高級路線だから、価格の安さが売りだからといった主張は、お客さまの欲求の違いを加味してはいない。安い、高いと言った価格や、自分たちの好みや雰囲気を重視する前に、主観を括弧にいれ、お客さまを理解するためのフィルターを持とう。
縦軸に価格を入れ、横軸に好みを入れ自分たちの価値の展開のし方を吟味していこう。

 縦軸の価格は、市場内下限を1として、2倍から3倍、3倍以上の三つの目盛を。
横軸の嗜好性は、自分の好みをAゾーンに対極をCゾーンに中間をBゾーンに三つに。
理論上九つの欲求を考えられる。
品ぞろえとはニーズの受け方、主観を客観に近い形で展開していく実践が肝になる。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 028」2017.1.6.13】