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COLUMN

いい会社づくり通信

対立は変化に生かせる好材料

2017.12.04岡村 衡一郎

 あちらを取れば、こちらがたたず。トレードオフになる事柄
が対立だ。
例えば、一人一人お客さまへの個別対応かマスを重視したオペレーションを取るのか。
メンバーを指示命令で動かすのか、それとも主体性を重視し待つのか。
企業経営において、長期視点か短期視点か、効率重視か未来最適か、いずれかを選択する場面で葛藤が起こってくる。

 この局面での選択は、どちらかを犠牲にして単純な方向に解を求めるケース。
または、満足を優先しようとか、主体性が大切だといった抽象度の高いところでの合意で終わることは多い。
しかし「A」か「B」のいずれかの選択や大きな方向性での合意で終えてしまっては、現状突破する対策としては
不十分である。
一方を選ぶのも大きなところでの合意も妥協的だと言えないだろうか。

 対立を正面からとらえれば自分たちの成長の糧になる。
長期と短期をつなぐ何か。スピードと主体性を同時に実現していく何か。
トレードオフの解消は成長課題そのものだ。
現状を突破できる第三の答えづくりが自社変革のトリガー。
自分たちの次元が上がれば、問題はなくなり、トレードオフの関係ではなくなる。

 フランチャイズチェーンAは、独自の方法を編み出し本部指示と店舗ごとの課題解決を両立させ業績を伸ばしている。
多店舗運営には次の葛藤がつきものだ。
マニュアル通りの効率運営で利益を上げるべきか、店舗ごとに異なる問題を解決して一店一店を強くすべきか。
「本部ノウハウを活用できれば業績アップにつながる」という仮説は常に本部にある。
その半面、現場と直に接しているSV には店ごとに異なる課題が見えている。
「一律一斉の展開では不十分、店の状況にあわせるべきだ」。
本部スタッフとSV、双方の主張は一理あるが、問題は前者では支えきれない店があり後者では時間がかかる
点だ。

 この対立を乗り越え前進する第三の方法をフランチャイズチェーンAは編み出した。
「業績改善セミナー」が本部主導か店舗主導かの対立を超え、個別対応と全体施策のバランスを最大化させた。
本部戦略の説明だけでなく、店長の言い分を第一に考えるのでもなく。
本部施策の意図の共有も、本部と店長、SV の三者が「イケる」と思える対策の立案も、同時に行なう作戦会議という新しい仕事のし方が、個別の課題解決と全店施策の実行力アップの双方に好影響を与えている。

 個店対策と全店施策が共存するフランチャイズチェーンはめずらしい。
「業績改善セミナー」がチェーンの強さと個店のよさを最大化させた。
本部施策か個別対応か、このぶつかり合いに単純解を求めずに双方の最大化を考えたから、自分たちの仕事の進め方の発展が起こった。
一見わずらわしいと思える対立は、見方を変えれば変化成長のための好材料になるのだ。

 トレードオフは未成熟な答えの選択である可能性がある。
トレードオフから双方の実現へのシフトへ。
より成熟した答えを探しだそうとする試行錯誤が、自分たちを自分たちの手で高める実践につながる。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 014」2016.9.23】