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COLUMN

いい会社づくり通信

ing の法則

2017.11.27岡村 衡一郎

 あるホテルチェーンで朝食メニューコンテストが開催されていた。
広告代理店が作成したパンフレットやポスターに各所の嗜しこう好を凝らした品々が打ち出される。
このホテルにとって初の取り組みになるだろうイベントに私は不安を覚えた、きれいにまとまりすぎているからである。
もう一回やろうとすれば、写真もビラも打ち出しも更新する時間と手間暇がかかりそうだ。

 自然食レストランでの新メニューの告知はシンプルそのものだ。
商品を主役につくった人の思いが、手書きメニューと黒板で打ち出されている。
おいしさを届けるために旬の設定が細かく分けられる。
メニューコンテストで一定量以上の投票が集まったものが順次、全店メニューに反映される。
更新頻度は週1回だ。

 コンテストを受けメニューを変更するという流れは、先ほどのホテルチェーンも自然食レストランも一緒。
違いは後者はやり続けることを前提にした仕組み、更新の手間暇を最小限に取り組んでいる点である。
最良のメニューは、完成するものでなく追いかけるテーマという位置にあるからだ。

 メニューもサービスもホテルのパンフレットも、当然ながら施設も、継続的なつくりこみで精度を上げることを前提にしておいた方がいい。
最初につくったものが100点ではない。
仮に100%であってもお客さまの嗜好は変わるし、提供側のレベルも上がる。
いつも、今ここで100%に近づけている実践を伝えるためのメディアがメニューであり、サービスであり施設である。
1カ月前のものは過去のものだ。

「上質」「品格がある」といったイメージを大切にしたいホテル業では、リーフレットやポスターなどの印刷物も高品質の整ったものが多い。
それを否定しているのではない。
上質感は利用する顧客にとっても満足を充足する要素だ。
落とし穴は変え続けやすいかどうかにある。
誰かが決めたものを再現する仕事にはあまり創造性を必要としない。
考えることよりガイドラインと現実のギャップを埋めることを要請される働き手はいつしか言われたことをやるというモードに入ってしまう。

 今日やっていることは、来週、ことによっては明日にでもよりよく変えることができる。
自分たちの商品・サービスが、お客さまの反応、自分たちの発見や学習によって変えられるものだと働く人は認識できているだろうか。
よりよくするものという共通認識は、お客さまを観察し知恵を働かせる条件になる。

「次はどうしようか」「こうしたらもっとよくなるのではないか」、そんな知恵を働かせる進化可能な仕事の仕方をどうつくっていくのか。
マネジャーはそういった知恵を働かせたいものである。
トヨタ自動車が大切にしている人間性尊重の意味は、ヒトの考える力を最大限に生かすということ。
作業を人に当てはめない。
だからこそ、一般的に変えることが難しいとされている生産ラインの変更も作業の手順も変えるのが仕事の中で
大きな位置を占めている。
思いついたら明日にでも手を入れられる。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 013」2016.9.16】