イノベーションターゲットは1/3 or 3 倍
2017.09.01岡村 衡一郎
イノベーションとは何か。
この質問に対する答えは、技術革新や新商品・サービスの創造などさまざまなものがあると思う。
「自分たちでも思いつくアイデアだった」と他社から言われるのが、イノベーションへの最高の賛辞だとドラッカーは言った。
起こったできごとを遠くから見ればそうかもしれない。
思いつけるようで思いつけない例として、無印良品とスターバックスがある。
無印良品は“訳あって安い”というコンセプトを起点にあらゆるジャンルに広げて、ブランドがないことをブランドにした商品革新。
スターバックスは、セルフでも心地よく“ 屋外でお茶をする”スタイルも当たり前にしたサービス革新。
外から見れば、自分たちもできたと思われるイノベーションであると同時に、近寄ってみれば偉業であると分かる。
無印良品が世に出てくる前、デザイン性を重視した生活をするにはそれなりに費用がかかった。
ところが、ブランドのないことがかっこよく、費用を1/3に抑えられるという新ジャンルを拓いたのである。
スターバックスは、ドリンクが一杯500 円前後にもかかわらず、セルフサービスということがコーヒー業界には衝撃的だった。
当時セルフは100 円台が常識で、約3倍の価格でも選ばれるサービスを提示したからだ。
高級陶器&フルサービスで500円という思い込みを覆したのである。
イノベーションのターゲットは、業界標準値の1/3 または3倍である。
御社はターゲットを据えて活動しているだろうか。
無印良品は1/3をあらゆるジャンルの商品で実現し、スターバックスは3倍価値を実現したゆえに選ばれている。
業界標準を下回っているものを直し「1」を目指す不具合対策と、標準を超える「1.5倍」or「3割削減」などの改善活動。
それこそが他者を大きく引き離す、「1/3」または「3倍」ターゲットのイノベーション実践なのである。
一つ目の「不具合対策」をやっていない企業はないだろう。
二つ目のターゲットである「改善活動」は10社中6社が私の経験則に基づく。
三つ目のターゲット、イノベーションとなると、時間軸が読みにくい、
PDCAが回せない、無理などの理由から、実践している企業は10社中1社に減ってしまう。
つまり、皆がやっていないからこそチャンスなのだ。
競争が前提、選ばれる必要性のある市場で一つ目の活動さえしていなければ即撤退。
二つ目の活動で勝ったり負けたりの勝負に。
三つ目の活動にどれだけ注力できるかで、オンリーナンバーワンの存在へと飛躍できる。
今すぐには実現できないが、他社が無理だと思い込んでいる目標に対して、「1/3」または「3 倍」に近づける仕掛けをどう今の活動の中に落とし込んでいくか。
単年度のPDCA に乗せにくい活動を内包できるのかが変化のカギとなる。
まずは今の活動を①不具合対策 ②改善活動 ③イノベーションの三つに分け、③への時間がどれくらい取れているのかを一度棚卸をすることが必要である。
【HOTERES「サービス・イノベーション48手 005」2016.7.3】